テーマ:文芸エッセー

誕生!家族っ子、すず実・完結

みんな輝きだした 「お母さん、このごろ、えろう優しいなったん違う?」  ある日、奈津実がポツンと言った。 「なんで?」 「ポンポン言わんようになったやん。そいに一緒に勉強してくれるようになったわ」  ハッとした。  そうだ。すず実誕生以前の私は仕事ひと筋だった。精薄児の通園施設保母の仕事に打ち込んでいた。子どもたちへの愛…
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誕生!家族っ子、すず実

すず実は家族っ子  ただいま、わが家の一日はすず実で始まり、すず実で終わる。年齢が離れているだけに、お兄ちゃんお姉ちゃんらにも、それに文句はなさそうだ。どうやらすず実は『家族つ子』になりそうだ。  長女はわたしと夫が商売で忙しい時期に生まれたせいで、夫の実家のおばあちゃんに育てられた『おばあちゃん子』。長男は当時やっていた喫茶店…
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誕生!家族っ子、すず実

誕生!家族っ子、すず実 きょうだいは多いほうがいい まったく躊躇もせず悩みもせずに、本当に自然体で妊娠と出産に臨んだ4人目の赤ちゃんが、わが家の幸福の使者、すず実である。 「男の子が二人屋のに、女の子は奈津実1人じゃかわいそうでしょう。奈津実に妹をつくってやろうよ。きょうだいは多いほうが頼もしくていいじゃない」 「そうや…
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みずみずしい野菜は誰のおかげ

みずみずしい野菜は誰のおかげ?  わが家の家庭菜園は、この春、妻が「自家野菜で家計を補うのよ!」とえらく張り切って始めた。  が、いつの間にやら、妻はその役割を放棄し、畑を耕し野菜を育てるのは、私の役目になってしまったのだ。  そんな時に限って、酷暑渇水という大変な夏が来るから、オレはついていない、畑の土はカラカラで、野菜を枯…
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クローン羊ならぬクローン人間?

クローン羊ならぬクローン人間?  八十歳を過ぎてから大病を患った義母。その介護と仕事を、やはりご老体なのに懸命にこなしている義父。夫の生家はすぐ近くなのに、なかなか手助けができずにいる自分がじれったいというか情けないというか……。  わが家は高校生二人、中学生一人、保育園に通う末娘を抱え、経済的にも時間的にもまったくゆとりのない…
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口は出すけど手は出さない

口は出すけど手は出さない 「きょうの休み、おとうさんの畑仕事手伝うてくれや」 「えーっ、ぼく、遊ぶ約束してんのに」 「あかんのか?」 「う……ええけど」  4年生の息子、誠悟はしぶしぶといった様子でうなずいた。 「かまへんよ、遊びにいったらええから。約束してんでしょ」  そばで聞いていた妻がよけいな口を出してきた。 …
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愛のキューピッドは贈られた絵本

愛のキューピッドは送られた絵本!? 「誕生日おめでとう。私が一番好きな絵本、プレゼントします」  はにかみながらも、おしゃれなリボンのかけられた絵本の包みを差し出す彼女。保母1年生の彼女にとって、絵本は身近なもののひとつなんでしょう。  付き合い始めて半年、ひとまわり以上の年齢差もあってなかなか進展しない間柄に、悩みジレンマが…
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オナラは永遠に直らない

オナラは永遠に直らない 小学校6年生の時、授業の真っ最中で、シーンと静まり返っているのに、私のお尻から、それもとてつもなく大きいのが、 「ブァーッ!」 クラス中の視線がいっぺんに私の方に向けられたのも仕方ありません。もちろん、先生も唖然とした表情で、こちらを窺いました。 「へへへッ」  万事休してしまった私。完全に開き直っ…
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男の屑と言われた女性に憤り

゙男の屑゙と言った女への憤り  二十六歳にして畑違いの外食産業へ転職した私は、当初こそ独立の夢を描いて着々と歩を進めていたものだが、実習現場に選んで入った喫茶店、この職場が不思議と水が合ったのか、 (このまま、ここで働き続けてもいいな)  なんて気持ちになってしまっていた。  オーナーも抱擁力があり、同僚も好人物ばかりだった…
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母と子をつなぐ雑誌広告

この頃の雑誌広告 「ウワァー、おいしそう!」  6歳の長女が、雑誌をペラペラやっていたかと思うと、いきなり歓声を上げた。 「なにが?なにが?」  私と5歳の長男が、野次馬になって飛んでいく。そして覗き込む。  大盤の婦人雑誌だった。2ページ全部使ったオーブンレンジのカラフルな広告で、1ページ分にビーフシチューが、いかにもお…
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先生を信じて飛んだ日

先生を信じて飛んだ日 「ちょっと話があるんやけどな……」  いきなり呼びかけられた。機械科で実習担当の永富先生だった。電気科で学ぶ私が先生と知り合ったのは同好会活動を通じてである。  新設2年目。県立T工業高校は、確立した校風はなく、かなり自由な雰囲気だった。クラブ活動も運動部が殆ど。美術部はなかった。趣味が漫画の創作だから、…
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育ったね『おとうさんっ子』その2(完結)

「か~ら~す~なぜ~なくの~♪」  泣き止まぬリューゴくんをソーッと泣き、小さな身体をリズムよく揺らしながら、お父さんが歌ってやった歌、忘れちゃいないよな。お父さん、あの歌しか自信なかったから、いつでもあればっかり。でも、あの歌こそ親子の愛情を歌っててピッタリだったんだ。 「この子、音痴になるわよ。情操教育が、あなたのリズムはずれの…
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育ったね『おとうさんっ子』その1

育ったね『おとうさんっ子』  リューゴくん、もう2歳になったんだな。1人前にお兄ちゃんやお姉ちゃんと遊んだり踊ったり歌ったりしてるけど、足元にはちゃんと気をつけなきゃいけないぞ。まだバランスが悪いからヨロヨロしてるだろ。けつまずいたりして転んで泣いてるのを見る度に、お父さんは、もう心配で心配で堪らないんだからな。  だって、お前…
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集めてます

集めてます 白黒テレビの『月光仮面』の痛快さに魅せられてから、ドラマの大ファンに。しかし、成人し就職してからは仕事が忙しく、リアルタイムで観るのは不可能になった。見たいドラマが見られず、イライラの毎日……。  十五年前、ついに念願の録画機を購入した。以来、DVDに保存し、その数は1000枚以上に。 定年を迎え、やっとゆっくり視…
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求められる喜び

求められる喜び  十二月十五日、六十歳の誕生日を迎えた。十三年勤めた仕出し弁当の料理製造会社が定年になる日。誕生日が現役引退と重なる皮肉な話である。嘱託の話はあったが、あっさりと断った。  二か月前に入院している。数個あった大腸ポリープの摘出手術で一週間のベッド生活。同部屋の似通った年齢の患者仲間と接したりしているうちに、これま…
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わが心に刻まれた名作映画

わが心に刻まれた映画 数多く鑑賞した名作大作映画の大半が、忘却の彼方に去ってしまった。けれど『風と共に去りぬ』だけは、まるできのうきょうに見たような、新鮮さたっぷりの記憶として刻みこまれている。レット・バトラーとスカーレット・オハラの激しい恋と愛憎、戦争、。豊かな大地を赤々と染める戦火と夕日。まぶたを閉じると、生き生きと蘇るシーン…
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沿線散歩

沿線散歩  定年退職後、しばらくして「ハッ!」と気づいた。何にもないのだ、自分のすること、したいことが。家族の嫌みに耐えながら、ゴロゴロするのも空しいだけだ。これは大変だぞ。まだ十年以上も生きていかなければいけないのに、どうする?  ふと近くにある赤字ローカル線の駅へ行ってみた。廃止寸前までいきながらなんとか生き残った路線で、高…
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運動神経

運動神経? 自慢できるもんじゃないが、運動神経の鈍さだけは物心ついて以来このかた、誰にも負けたことはない。そして、それは劣等感となって、いまだに私を支配している。  棒のぼりダメ、跳び箱ダメ、鉄棒ダメ……体育の時間がくるたびに、私は同級生の笑いにさらされたものだ。今日、なんとかマトモな夫であり、父になれたのが不思議といっていいザ…
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婿舅の戦いの後に

婿舅の闘いのあとに  わが家は嫁姑ではなく、婿舅の戦いである。年齢が十三違う一人娘を妻にしてしまったばかりに、過酷な体験をしている。 「うちの娘の将来を、あんたみたいな、馬の骨同様の人間にまかせるわけにはいかん。どないな玉の輿でもこれから乗れるっちゅうのに、えらい迷惑や」  結婚を申し込みに行った私に浴びせられた舅の言葉。もち…
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モーレツに腹が立ったこと

モーレツに腹が立ったこと  失業状態で3ヶ月、家でゴロゴロしているのも飽きて、ふらっと外に出た。喫茶店でコーヒーを飲んでからパチンコ屋で時間を過ごそうと思ったが、一〇分ほどで玉はすべて失った。  3軒のパチンコ屋を回ったが、どこも同じで入らない。パチプロとまでいわれていた昔が嘘みたい。ごぶさたしているうちに腕が鈍ったのか、コツが…
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美学

 定年退職してパートに。時間が出来ると家の食事作りを一手に引き受けさせられた。  実は私は調理師免許を持っているれっきとした料理人だった。仕事もレストランや和食屋と、調理畑で40年近く働いてきた。  そのキャリアを今度は家族のために生かせというわけである。調理師として働いていた時は、一切家で料理は作らなかった。「プロは金を貰って料理…
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明け方の贈り物

明け方の贈り物  夕方から明け方にかけての深夜勤務についてから、子どもたちとすれ違いの生活が始まった。出勤するときには子どもたちは遊びに出ているか、まだ学校だったりするし、帰宅したときは夢の中なのだからしかたない。  その日も明け方、眠い目をこすりながら帰宅した私が玄関を開けると、なんと玄関先に子ども三人と妻が揃ってお出迎えであ…
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失意の私の前に

失意の私の前に!?  私の半生で最も痛烈な打撃だった。当時三十歳、それまでは多少の波はあれこそ、好運に恵まれトントン拍子にきていたせいもあって、失意のどん底を味わう事となった。  独立の夢を描き脱サラ、調理師学校を経てレストラン、喫茶店で修業を積み、遂に一軒の店を任されるまで七年がかり、兎より亀になるんだと、慌てず騒がず、じっく…
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先生との出会いに感謝して

先生との出会いに感謝して  その夜、夜勤に出る支度をしていた私に電話が入った。 「遅くに悪いな。どうしても電話したくてね」  その声を耳にしただけで、O先生の底抜けの笑顔が私の頭に浮かんだ。数日前に公演した私の舞台を観劇したとのことだった。  O先生は、出会った当時、小学校の先生だったが、別に私はその教え子というわけではない…
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お小遣い

 結婚した当初、お小遣いは月一万円。ガソリン代等は別に出るが、かなりシビアな金額だった。それが子供が出来ると、もっとシビアに。なんと五千円。  深夜に働いていたので、友達との付き合いは滅多にない。酒もたばこもやらないのだから、「遣うことないでしよう」と妻の言い分。当たっているから黙って従う。一日一本の勘コーヒーを自動販売機で買い求める…
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親子であることの証明

親子であることの証明  前触れもなく父はいきなり勝手口から入って来た。ノソッという感じだった、 「おるかっ!」といつものぶっきらぼうな口調で居間に上がり込んで来て、私が寛いでいる炬燵の向かい側に足を入れた。  珍しいことだった。別に険悪な仲だというわけではないが、父と私はどうも気楽に話せない間柄だった。私も父も似通った話し下手…
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ぼくは泣かないのに

ぼくは泣かないのに  夫婦で力を合わせて、八年間やってきたお店を、夫の体調の崩れとともに訪れた営業不振で、万策尽きて遂に店仕舞いとなってしまった時の、辛さと惨めさといったら大変なものでした。  ガックリと心身ともに落ち込んでしまった私と夫を、最後の最後まで支えてくれたのは、三人のわが子たち。一人は、まだ赤ちゃんでした。まだ物事の…
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母を恋うる記(もうお母ちゃんを泣かせへん)

母を恋うる記(もうお母ちゃんを泣かせへん) 十七歳の夏、その事件は起きた。母の悲痛な顔、物心ついてからこっち初めて見る表情だった。小さい頃からおとなしくてかしこい子どもで通ってきた。何の問題もない自慢の息子が、思いもかけない不祥事を起こして警察沙汰になってしまったのでは無理もない話だった。  お喋りの母が全く口を開くこともなく、…
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私を変えた、先生の「ありがとう」

私を変えた、先生の「ありがとう」 (学校なんか、行きとうない……!)  朝を迎えるたびに、私の切羽詰まった思いはぶり返した。時には頭が痛くなったり、腹痛を憶えたりと、登校したくない気持ちが、そんな体の変調を次々と生み出した。 「また怠ける気か?仮病使うてもあかん、はよ行かんかいな。遅刻してしまうやないの!」  最初の頃は息子…
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心に残る先生の笑顔

心に残る先生の笑顔 「ちょっと手を見せて」  面接の水野先生はいきなり言った。 恐る恐る出す手を易者のようにためつすがめつした先生はにやりと笑った。 「器用な手をしとるな。 なんか得意なもんあるやろ。 手先使うてやるもんで」 「漫画を描くのんが好きです」 「へえ、すごいなあ。 それやったら料理なんかもっと簡単や。 …
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