かさいに生きて4 ゆるぎ岩4

幼い頃祖父が話してくれました。法道仙人が「善人が押せば動き、悪人が押してもびくともしない。この岩を押して動かないときは自分に邪心があるから、罪悪を懺悔して正直慈悲の人に立ち返りなさい」と言って心を試させたんだよ、と。


『ゆるぎ岩』の感触はひんやりしています。
それにザラザラしたものが,
手のひらにくっつきました。
(お願いだよ。
『ゆるぎ岩』、
揺れてよ。
ぼく、
ズーッといい子でいたんだから。
これからも、
もっともっと頑張って,
いい子になるんだから)
 リューゴは自分の手に,
二倍はありそうな岩肌の手形の枠の中へ,
手を当てました。
「うん。
よーし!
じゃあ押してみろ」
 お父さんが大声で言いました。
自分が押しでもするように,
手をゲンコに握り締めています。
「よいしょ!」
 リューゴは掛け声をかけて、
力いっぱい押しました。
「いいぞ、
リューゴ、
もっと押し続けろ」
 お父さんの声が、
リューゴの頭の後ろからかかりました。
「うん、
わかった、
お父さん。
よいしょ、
よいしょ、
よいしょーっと」
「よいしょ、
よいしょ、
よいしょーっと!」
 リューゴの掛け声に合わせて、
お父さんも同じように掛け声を掛けます。
お父さんは、
もう嬉しくて嬉しくてたまらないのです。
「よいしょ!」
「よいしょ!」
 リューゴは,
期待いっぱいで上を見上げました。
お父さんも同じように見上げました。
(さあ、
揺れろ……1、
2、
3……!)
 リューゴは心を込めて号令をかけました。
『ゆるぎ岩』がリューゴの願いに応えて、
ゆらーっと揺れやすいように……。
「あれ?」
「う?」
『ゆるぎ岩』は揺れません。
ちっとも揺れる気配はありません。
どうして?
リューゴがこんなに懸命になっているのに、
一体どうなっているんでしよう?
 リューゴは(アッ!)と思いました。
やっぱり心配した通りになったのです。
リューゴは『ゆるぎ岩』に,
いい子だと認めて貰えないみたいです。
リューゴはガッカリしました。
体中の力が抜けてしまいました。
くにゃくにゃと,
お父さんの腕の中に身を任せました。
「おい、大丈夫かい?」
 お父さんは,
しっかりリューゴを抱きとめました。
「……お父さん…ぼく、
ぼくって……悪い子なの?」
「何だって?」
 お父さんは,
リューゴに思いがけない質問をいきなりされて,
ビックリしました。
「……ぼくさあ、
ダメな子なの?
いけない子なの?」
 リューゴは悲しくてたまらない顔つきで,
お父さんを見上げました。
涙が胃尼にもこぼれそうです。
お父さんはすっかり戸惑ってしまいました。
「だって…だって…動かないよ、
揺れてくれないよ、
『ゆるぎ岩』が。
ちっとも揺れない……」
(ハハーン!)
 お父さんはやっと分かりました。
きれいでよい心の持ち主でないと、
『ゆるぎ岩』は絶対に揺れないんだ。
そうお父さんが話したのを、
リューゴはちゃんと覚えていたのです。
だから、
『ゆるぎ岩』が全然揺れなかったので、
自分は悪い子なんだと、
ひどくショックを受けているのです。
何とかしないと……。
「ああ、
ちょっと待てよ、
リューゴ」
 お父さんは首をひねって見せました。
「なに?
お父さん、
どうしたの?」
「うん。
いま思い出したんだ。
そうだそうだそうだったんだ。
お父さんが初めて『ゆるぎ岩』を押した時のことだ」
「揺れたの?」
 リューゴはお父さんの話をひと言も聞き漏らすまいと、
ちいさな体を乗り出しました。
「そうなんだ。
揺れたから、
もう嬉しくてたまらなかったよ」
 リューゴは、
お父さんの言葉にガッカリしました。
(ぼくが押しても揺れなかったのに、
お父さんの時は揺れたんだ。
やっぱり、
ぼくは悪い子なんだ……)
 リューゴがしょぼんとすると、
お父さんは頬笑んで、
こう言ったのです。
「お父さんひとりで、揺らしたんじゃないんだ」
「え?」
img006.jpg

思い出と現実

深夜1時前。

蛙の大合唱の中、
思いにふける。

昼間に草刈りをしていると、
草にまみれた中に見つけたもの。
我が家に16年いてくれた、
愛犬タロのレプリカ墓碑。
土中に入っているのは
首輪などタロの生存中、
愛用したグッズの中身など、
万感の思いで埋葬したものだ。
しばし思い出に浸った。

夕刻に息子からのlineが
妻に届いた。
彼がエリア長を務める
静岡の店舗が全店休業になったらしい。
「頭を切り替えて頑張るよ」
息子の言葉は強がり、
はたまたリアル決意なのか。
とりとめもなく
いらぬ想像を逞しくした。
甲斐性のない父にできることは何もない。
(気張れや)と念じるのが精いっぱい。(ああ、情けなや)

そんな私がコロナ自粛中に
懸命になれる場が、
自分仕様に構成した
作業スペース。
なんとなくパチリ。
スマホにも少し慣れてきたようだ。

はははははは.jpgimg004.jpg

かさいに生きて3(ゆるぎ岩3)

「さあ替わろうか。

こっちへ来てごらん」

 お父さんは、

『ゆるぎ岩』から手を離して、

言いました。

 リューゴは緊張してコチコチになりました。

だから「うん」と返事をしたつもりなのに、

実際は声が出ていません。

「うん?

リューゴ、

どうかしたのか」

 お父さんも、

リューゴの様子がいつもと違うのに、

気がついたようです。

「……お、

お父さん…?」

 やっと声が出ました。

「ぼく……もう押さなくていいから……」

「あんなに楽しみにして、

待っていたじゃないか」

「で…でも……きょうはいいんだ、

もう」

 お父さんは、

「ハハーン」と気が付きました。

「リューゴ、

怖いんだろ?

もし揺れなかったら、

悪い子だってばれちゃうって」

「怖くなんかないよー!

ぼく、

一年生なんだぞ。

それに…それに、

ぼく、

悪い子じゃないからね」

 リューゴはむきになって、

言い返しました。

「そうだそうだ。

リューゴはもう一年生だもんな。

それに、

そんなに悪い子じゃない」

 いい子っていうところを、

お父さんは少しふざけて言いました。

そして急に真面目な顔になりました。

「実はな、

リューゴ。

お父さんも子供の頃、

そうだ、

ちょうどリューゴと同じ一年生だった。

初めて『ゆるぎ岩』に連れて来て貰ったんだ。

『ゆるぎ岩』を前にしたら、

なぜかブルブル震えだして、

手がだせなくなってしまったんだ」

「ほんとう?」

「ほんとうさ。

いまにも倒れてきそうな気がしたし、

押しつぶされたらどうしようって思ったんだ。

足元だって、

崖になってて、

なんか目がクラクラしてさ……」

 リューゴはがっかりしました。

(ボクが怖いのは、

いくら懸命に押しても、

『ゆるぎ岩』がびくともしなかったらって、

……動いてくれなかったら、

ぼくは悪い子になっちゃうんだぞ)

「よーし!

お父さんがリューゴの身体を、

支えといてやるから大丈夫だ、

な。

さあ安心して、

思い切り押してみろよ」

 お父さんはリューゴの肩に、

そーっと手を置きました。

 仕方ありません。

こうなったらやるしかないようです。

 リューゴは勇気を出して、

一歩前に足を踏み出しました。

目の前にゴツゴツした岩肌が迫ります。

思わずリューゴは目をつぶりました。

「よし!

さあいくぞー!

 お父さんはリューゴの腰に手を当てました。

お父さんの力強さが伝わってきます。

 リューゴは目を開けました。

もう覚悟は出来ました。

両手を岩肌に向けて突き出しました。

岩肌の感触が……!

「いいぞ。

よしよし、

いいか岩肌にペンキで書いてある手形に、

掌を合わせてごらん」

 リューゴにもう迷いはありません。

『ゆるぎ岩』は、

絶対に揺れてくれるんだと信じました。

あんなに頑張っていい子になってきたんだ。

『ゆるぎ岩』はきっと知ってくれているはずです。

偉いお坊さんがプレゼントしてくれた、

奇跡の御神体なのだから。

 リューゴは、

手を前に突き出しました。
img003.jpg

蛙の歌は

深夜1時過ぎ。

暑いので開けっ放しの窓から
蛙の鳴き声が飛び込んできます。
ゲロゲロゲコゲコと大合唱です。
ここ数日で
家の周囲にある田んぼは
みんな水を張って、
もう溜池そのものです。

心得たもので
蛙も早速鳴きだしました。
一年ぶりだから、
やっぱり最初はうるさくて堪らない。
もう数日寝不足です。
元来夜型人間で
昔、弁当製造工場で深夜勤務を
10年以上専従したこともあり、
夜に強く、
定年退職後も、
明け方4時ごろまで
撮りためておいた外国ドラマのDVD鑑賞や、
読書や原稿を書いたりと、
結構深夜は強いのですが、
外部からの騒音はきついですね。
集中力が働かず、
何もできないことになります。
(クソッタレ)なんてムカついていますが、
これも数日で慣れてしまい、
蛙の鳴き声が聞こえなくなると、
寂しくなったりするから、
吾ながら身勝手だと思い当たります。

いまブログに取り掛かりました。
20日締め切りの公募の原稿も書くつもりです。
蛙の声を
クラシックと思い、(ちょっと無理かな?笑)
モニター画面と睨めっこです。
5時ぐらいまで頑張りま~す。(うん)

img002.jpg

ちっぽけな感動

きのうは
草刈りと防獣網設置に
夢中になったせいで、
夜は膝や体が痛み、
結局何もできず仕舞い。
夜型人間は諦めて、
寝ることにしたが、
眠りは案の定浅く
熟睡には至らなかった。

まだ痛む膝を励まし、
家の裏を散策。
周囲はヒノキの大木がそそり立ち、
その一角だけ
まさにジブリの森化している。
控え目に広がる畑、
山菜が茂るエリア
まさに田舎暮らしの冥利。
一面を占める若葉に
そーっと足を忍ばせた。
ちょっとしゃがみ
覗き込むと、
(アッ!)
ミョウガがにょっきり顔を出している。
辺りを覆うフキの葉も何のその。
実は
昨年末、
掘り越して
広い畑へ移植したはずだった。
どうやら分球していたらしい。
フキを凌駕するかのように
そそり立つ(?)ミョウガに
思わず胸がキュ~ン。
コロナで荒んだ心に
なつかしい感動は蘇った。

実は花を愛でることはできても
花の知識は皆無。
赤と白の花の
加減の良さに
しばし見とれてパチリ。
白い花は一日だけ咲き誇るとか、
誰かが言っていたなあと
とりとめなく思った。
いやはや
こんな調子じゃ
花もいい迷惑だろうな。(笑)

癒されたのか、
膝の痛みをしばし忘れていた。
花は、
植物は最高だ。(うん)
img001.jpgマラ.jpgハマタ.jpgサタラ.jpg

かさいに生きて2(ゆるぎ岩2)

ゆるぎ岩は加西市の畑町の山にある巨大な岩。高さ4メートル、中央部周囲6・6メートルの卵型をしています。そのゆるぎ岩を舞台にお話は展開します。


「ゆれてるよ、
ゆれてる…お父さん!
ゆれてるよ」
 リューゴは,
もう夢中で歓声を上げています。
 お父さんはリューゴを振り返ると、
ニヤリと笑いました。
「お父さん、
今度はリューゴの番だよ。
ちゃんと約束してたんだからね」
「ああ」
 お父さんは,
大きく頷きました。
 そうなんです。
お父さんは,
去年の夏に約束してくれたのです。
「リューゴが一年生になったら、
『ゆるぎ岩』を思いっきり押させてやるぞ!
でも、
ちゃんといい子にならないと、
この岩は絶対に揺れてくれないからな。
よーく覚えておけよ、
忘れないように」
 だから、
リューゴは一生懸命に優しいいい子になろうと,
頑張って来たのです。
「この『ゆるぎ岩』には、
お父さんがまだ子どもだったころよりズーッとズーッと,
昔から不思議な言い伝えがあるんだ」
 約束をした日、
お父さんは,
こう話しだしました。
リューゴはお父さんの目を見つめて、
真剣に聞きました。
「もう何千年も昔のことだ。
とても偉いお坊さんがこの村にやって来たんだ。
空海ってお坊さんだけどな、
この村にとても不思議な力で、
すごい奇跡をいろいろ与えてくれたんだ」
「へえ、
不思議な力?
奇跡って?
どんな?」
 リューゴは目を真ん丸に見開いて、
お父さんをジーッと見つめたまま尋ねました。 
 お父さんは嬉しそうに説明してくれました。
「お坊さんは村の人たちにこう言ったんだ。
この岩は、
いい心の持ち主ならば、
ちょっと押すだけで揺れるが、
悪い心の持ち主は、
どんなに力をこめて押そうとも、
決して揺れない。
びくともしないだろうってね」
「フーン。
不思議な力なんだ」
「そうなんだ。
だから、
村の人たちはいつ押しても、
岩がちゃんと揺れてくれるように、
いつも心がきれいで優しくいられたんだってさ。
おしまい」
 お父さんの話は、
リューゴの心の中にしっかりと残りました。
それで、
いつも優しくきれいな心でいようと、
努力をしてきたのです。
だから『ゆるぎ岩』は揺れてくれるはずです。
 でも、
実はリューゴには不安もあります。
だって、
お母さんのお手伝いをしなかったり、
駄々をこねて困らせてみたりと、
悪い子の時の方が多かった気がします。
(もしも『ゆるぎ岩』が揺れなかったら、
どうしよう?)
 リューゴは、
小さな胸をドキドキさせました。

img018 (508x640).jpg

かさいに生きる1 ゆるぎ岩1

リューゴの住んでいる村は、
豊かな山々に囲まれた盆地にあります。
春、夏、秋、冬と季節が変わるたびに、
いろんな表情を見せて楽しませてくれる、
深い森がいっぱいの山々です。
その山には、
ズーッと昔からある神社とか、
伝説の場所とか、
いろいろあるのです。

 リューゴは山の中腹にある『ゆるぎ岩』が大好きでした。
小さい頃から、
お父さんにしょっちゅう連れて行って貰っています。
お父さんは山歩きが大好きなのです。

 リューゴは今年から小学一年生になりました。
小さな胸がドキドキしっ放しだった入学式も終わって、
リューゴがお母さんと家に帰ってくると、
お父さんが待っていました。
ニコニコしてリューゴを迎えてくれました。

「おめでとう。
リューゴもやっと一年生になったんだな」

「うん。ぼく、
一年生なんだ」

 リューゴは得意そうに胸を張って言いました。

「よーし、
それじゃ、
あの約束を果たしてやろう」

「本当。
じゃあ、
服着がえてくるからね。
待っててよ」

「ああ、
いいよ」

 お父さんは、
ポンとリューゴの頭に手をやりました。

 慌てて服を着がえたリューゴは、
お父さんと一緒に山へ登りました。
もちろん、
『ゆるぎ岩』のある山です。
でも、
きょうはいつもとちょっと違って、
楽しいことが待っています。
そうですお父さんとの約束が実現するのです。
一年生になったら
(ゆるぎ岩を、
お父さんと一緒に揺すってみようか)
との約束でした。

『ゆるぎ岩』は四メートルもありそうな、
大きな岩がふたつ並んで寄り添っているのがそうです。
ひとつは三角おにぎりみたいな形だけど、
もうひとつの岩は随分不思議な形をしています。
卵を縦に立てたのと同じで、
いまにも倒れてしまいそうなぐらい根元が細いのです。
でも、
絶対倒れたりしません。

「さあ、
リューゴ、
よく見てろよ」

 お父さんは『ゆるぎ岩』を前にして立つと、
リューゴをチラッと見て言いました。

「うん」

 リューゴはちょっぴり緊張気味で返事をします。

 お父さんはパンパンとかしわ手を打って、
さあいよいよです。
お父さんは『ゆるぎ岩』の表面に描かれてある手形へ、
手を伸ばしていきます。
白いペンキで輪かくだけの手形です。
ペッタリとお父さんの手は、
手形に合わさりました。

「それ!」

 お父さんは掛け声とともに、
『ゆるぎ岩』を押しました。

 リューゴは固唾を呑んで、
『ゆるぎ岩』のてっぺんを見つめます。
力いっぱい小さなコブシを握り締めました。

 一回、二回、三回……
お父さんは『ゆるぎ岩』を押し続けます。

「アッ!」

 リューっが驚きの声を上げました。

                           (つづく)
img016 (500x640).jpg

つれづれに

コロナに疲弊を覚えながらも、
生きている以上
何かをやろうと
身近なものに
目を向ける日々です。


昨日、
小諸・藤村文学賞の
本選考候補作品に決定したとの一報が。

これまでにも最終候補に残った公募は
いくつかありますが、
勝負運の悪い私に
栄冠はいつも冷ややかです。
それでも、759編の応募作品から
選抜(?)されたことは、
光栄だし、
実に嬉しい限りです。
それに次への挑戦意欲を掻き立ててくれます。


とはいえ
目がますます悪くなり、
大型ミニター画面が
見ずらくなるばかり。
白内障の手術を受ければ
少しは回復するかもしれませんが
思い切れません。(根っから怯んたれなんですよ。苦笑)

昨日の続きで、
根日女創作倶楽部@まちライブラリーに
関連の写真をアップしました。

小動物とのふれあいや
ミニガーデンとプチ畑のたい
コーヒーを飲みながらの本談義、談笑の場も
用意しています。
コロナが収まったラ、
この田舎まで足を延ばしてくださいますように。

img010.jpgかわ.jpgさら.jpgちびっこ2.jpgなかやま.jpg

故郷のお話5(根日女昇天・完結)

 許麻は気配を抑えて根日女の寝顔をそっと窺った。やはり絶望感に襲われる。すべてがあまりにも遅かった。娘は都から来るであろう愛の使者の訪れを、待ち草臥れた果てに明日をも知れぬ病床にあった。
「オケノミコさまが、大王さまのお言葉を携えて参られた由、申されております。
「なんと、オケノミコさまが自ら参られておるのか……!」
 すると巷の噂通り、新しい大王に即位されたのは、弟皇子のワケだったのだ。知的で華奢な趣のあった兄のオケと違って、血気盛んな若い武人だったヲケは、後輩の極みにあった大和の秩序を再度取り戻そうと、勇ましく戦の先陣に立ち、多大な武勲を打ち立てたに違いない。物静かな気性のオケは、兄の立場からいけばおのれが際に就くべき大王の座を、無類の功労を重ねた弟に喜んで譲ったであろうことは想像に難くない。
 バタバタと足音が屋形内に響いた。
「これ、そなたは、根日女のそばに!」
 許麻は侍女を根日女の寝所へやらせると、縁先から土間に急いで下りた。たとえ何者であろうと、いま寝所で寝入る哀れ見苦しい姿を、他人の目に曝させるなど断じて出来ない。
 足音の主は、やはり予想通りオケノミコだった。根日女があれほど待ち焦がれた相手だというのに、いまその貴公子を前にして許麻は強い戸惑いを禁じ得なかった。
「大和の都に出立したあの日、固く誓った通り、そなたの娘、われら兄弟の愛する根日女を、こうして迎えに参ったのだ!」
「……オケノミコさま……」
「根日女はどこだ?どこにおるのじゃ、根日女は!
 オケが感極まって大声で呼ばわった。気品がいや増した顔付きが、許麻に迫る。
「お待ちくださいませ、オケノミコさま……」
「いや、もう待てん。根日女はどこだ?」
「!……」
 その時だった。
「あーっ!根日女様―!」
 侍女の驚愕の叫び声に、許麻は娘根日女の目覚めを知った。根日女がオケノミコの声を忘れようはずがない。オケの声は根日女に届いたのだ!
「根日女?根日女は、そこにあるのか!」
 オケノミコは歓喜の表情を見せて、激しく許麻を押しのけかけた。許麻はオケをとどまらせるのに力を込めた。
「お待ちを!しばしお待ちを、オケノミコさま…しばし!」
「?」
 きっぱりと制する許麻の迫力の前にオケの動きは止まった。
「あっ!根日女様!ああーっ!根日女様―!お屋形様、根日女様が、根日目さまが……!」 
 侍女の悲鳴と絶叫に、許麻は悟った。根日女の生命の炎が燃え尽きたことを。根日女は、オケの声を聴き、ようやく神の御手にその魂を委ねたのだ。
 娘、根日女はオケの来訪を知り、愛をひたすら信じて生きた、果てのない耐え忍んだ日々が、決して根日女を裏切らなかったことを知ったのだ。その刹那、根日女はようやく運命から解放されて、あの母のもとに旅立ったのだ。許麻を、賀茂の民人を、オケをヲケを、そして賀茂の大地を、根日女が生涯愛し続け来たすべてから解放されて、母のもとに旅立ったのだ。
「根日女は……?」
 訝しげに問うオケノミコを遮るために仁王立ちする父、許麻の目からボロボロと大粒の涙が零れ落ちた。    (完結)
(おーる文芸誌・独楽1995年3月掲載)
img009.jpgimg017.jpgimg001.jpgimg016.jpg

まちライブラリー、ラブ💛

空模様がおかしいので、
畑仕事は一休み。
自宅に開設している
まちライブラリーの
蔵書整理にかかった。
コロナで開店休業状態の
三つの図書ルームに
区分けした書籍1500冊以上の蔵書。
一冊一冊に
思い出が刻まれている。
書店の店売部門に勤めた
6年余りの間に、
購入した本の数々。
失恋や仕事上の懊悩……
まさに青春の日々を送る中で、
好きな本に癒されたのを思い出す。
本こそ我が人生、
本によって生かされたと思っている。

ちなみに
授かった4人の子供の中に
本好きが一人もいないという皮肉な現実。(力なく、ハハハハハ)

私亡き後、
まちライブラリーも
蔵書も
跡かたなくなる定めかも知れないなあ。(はぁ~)

らいふ.jpgランキングIMG_20200514_145509.jpgDSC_0556.JPGDSC_0555.JPG

故郷のお話4(根日女昇天4)

「おとうさまをお残ししては、根日女は気がかりで先にはとうてい行けませぬ」
「うん?大和へか?」
 許麻はわざと問うた。弱弱しい娘の姿を前に、彼女の本音をまともに受け取れなかった。根日女は童女のごとし無邪気な笑顔を作り、目を細めた。まるで絹糸のように細くなった。
(……判っていらっしゃるのに、人の悪いおとうさまです)
 根日女が懸命に作る笑顔が、そう語っていた・許麻は根日女を見やって相好を崩した。ほかにどううけてやるべきか思いつかなかった。
「春までには、都から吉報が持たされよう」
 許麻は根日女の言葉が聞き取れなかったふうを装って言った。
「先夜、根日女は久方ぶりの夢を見ました」
「おう!そうかそうか、それはよい。夢を見るのは、そなたが回復している証しだ」
「わたしはははさまにお会いしました」
 根日女は果てしなく遠くを見つめていた。許麻は狼狽えを必死で抑えた。根日女の母カナヒメは、幼い娘をかばい自ら雷に打たれて死んだ。愛する妻を目の前で喪った許麻の悲しみが癒えるまで、気の遠くなるほどの歳月を要したのである。その身代わりとなって神に召されたカナヒメが娘を迎えに夢の中にあらわれた。つまり……!そんな不安がいきなり襲ったのである。
 根日女は母のすべて、美しさと優しさ、神秘的な力をそっくり受け継いで成長した。カナヒメに先立たれて生きる気力を失いかけた許麻を再生させてくれたのは、その娘だった。その娘が、いま病を経て朽ち果てようとしていた。
 賀茂の国は巫女としての能力を備えたカナヒメの存在が、国土に豊かな繁栄を与えてくれた。そのカナヒメが亡きあとは、新たな巫女根日おんなが賀茂の民人の心に潤いと希望を与えた。賀茂の国の未曽有の隆盛は、武骨一徹な許麻の統治だけでは成し遂げらなかっただろう。
 それを許麻はよく知っていた。
 許麻は根日女が神に召されたあとの賀茂の国を想像しては、背筋に悪寒を走らせ怯える昨今だった。荒廃しきった国土と国の民人らの絶望に崩おれる姿を間に、手をこまねくしかない無力の許麻がいる。許麻の脳裏をいとも鮮やかに直撃しては巡るのだ。
(老いたわしには、もはやどうしようもあるまいて……!)
 許麻はいつしかそう達観するようになっていた。
「おかあさまは何も申されなかったわ……ただ、ただ……記憶にある、あの頬笑みを下さっただけ……」
 許麻はわが妻だったカナヒメが娘の夢枕に立って何を伝えようとしたのかが判る。根日女の苦痛の日々に終幕を一刻も早くおろさせてやりたい。父である許麻とて念じる気持ちは同じだった。
「母羽のう、根日女。そなたとそっくりに、うぬn、優しい女人じゃったぞ」
 許麻の嘘偽りのない呟きだったが、根日女はもう聞いていなかった。疲れ果てた娘はすでに眠りに入っていた。寝息すら生気を感じさせない根日女は、ひとまわり小さく萎んで見えた。
(わしの仕業で……)

 物心ついたときから賀茂の国の民人や父許麻のために、母の代役を務めざるを得なかった根日女は、その宿命に殉じるために、愛を捨てさえしたのだ。
(わしが…この父が……そなたの幸せを奪うてしもうたのだ……!)
 許麻は同じ後悔を何度繰り返して来たか判らない。いまさら取り戻すことなど、とても覚束ぬ歳月を歯ぎしりしながら振り返ってばかりいた。
「お屋形さま!」
 先ほどの次女が部屋の敷居の向こうにに控えていた。
「何か?」
「いま都からのお人が。皇子さまです」
「な……!」
 許麻はしばし絶句した。
 それからいかにも大儀そうに口を開いた。
「そうか…都から、人がのう……?」
(続く)
(おーる文芸誌・独楽1995年3月掲載)

img023.jpg

レンゲを刈り払う

もう夏を思わせる暑さ。
きょうは家から200メートルほど
離れたところの畑仕事。
2反歩程度の広さを
レンゲが覆っていました。
レンゲ畑の見ごろも終わったので、
刈り払いました。
レンゲのあしが
草刈り機の歯に
しつこく絡みつきます。
三分の二ほど
刈ると
かなり疲れます。
そして、もうお昼。
片隅の自家菜園を
ひととおり見回すと、
イチゴが赤く熟しています。
ひとつ頬張ると
甘くておいしい。
市販のものとは
比較になりません。
この土曜日に孫のところに
届けるつもりです。
ちなみに下の孫が
やっと歩きました。
1歳半、少し遅い感じですが、
母親(娘)の
キャッキャッと喜ぶ声が入った動画が
メールで送られてきました。
スマホデビューした
私のlineにも入ってきました。
コロナに気も滅入る日々に、
嬉しい報告でした。
我が孫たち、
イチゴを喜んでくれるかな。
と思いもウハウハながら、
畑の証拠写真(?)を撮ることにしました。
数年前までコメづくりしていた
圃場です。
今は草マミレですが、
区画を区切り、
道までつけているんですよ。
機械がないので手作業ですが、
何とかサマになっています。

いい汗をかきました。(満足)

ついでに
家の裏手にある畑に、
残しておいた春菊の花が咲いていたのでパチリ!

img015.jpg田んぼ口.jpg田んぼ畑.jpg畑写真.jpgしゅんぎく.jpg

暑くなりました

スマホを使って、
身辺の写真を撮ってみました。
まずは家の敷地内にある庭兼畑です。
昨日別のところに積んでいた古いレンガを運び、
縁石代わりに並べてみました。
暑くなって
シャツ一枚でも汗が出ました。
今日は
土をならす予定ですが、
果たして
やる気になるかどうか、
ただ
朝はやや涼しめです。
下手に悩まんと、やれ~~!と
ナマケモノの私の尻を
叩かんばかりです。(笑)

ニワトリ.jpgIMG_20200513_160552.jpg

故郷のお話3(根日女昇天3)

「ならば、わしらと一緒に大和へ参ろう、根日女。わしも兄者もそなたが身近にいさえしてくれれば、これまで同様、時の流れにわれらが愛の行方を任せられる」
「いずれ、そなたがわれら兄弟のどちらを選ぶことになっても、決して泣きも恨みもせぬ。愛が憎悪に変わるのは、その愛が浅いからなのだ。わたしもヲケも、その深さは深海のごとしじゃ」
 兄弟皇子は競い合うように根日女に懇願した。ウソ偽りが一切混じらぬ心情を吐露する二人の姿は、根日女の胸を熱く揺り動かした。
 根日女は兄弟皇子のまっすぐな熱情に、ふいに身を委ねる気にとらわれた。いつしか、わが身が兄弟皇子のの方へ傾いでいくのを自覚した。根日女は運命にすべてを委ねようの思いを募らせ、目を閉じた。
(!)
 その刹那、根日女の本能は、もうひとつの気を感じとった。もの心がついたときにはすでに身の近くにあり、惜しみなく注がれる愛の気が根日女をジーッと見つめていた。根日女は耐えられず、それでもゆっくりと、その気を確かめるために目を上げた。
 根日女の視界に、父許麻がいた。その岩相は懊悩と虚脱感に支配されて蒼白だった。まるで痴呆のように顔中の筋肉を弛緩させて立ち尽くしていた。わが身のすべてを投じた愛の終焉を目の前にした父親の愚かな未練と喪失感が、彼の総身を市街していた。
「おとうさま……?」
 根日女は一瞬にして正気を取り戻した。愛の勘定のうねりに身を委ねようとしたおのれに気付き、強い恥じらいを覚えた。
 根日女は背筋をピーンと張った。賀茂の国の希望と夢を担った王女の顔になった。根日女は賀茂の国を照らす太陽そのものの存在なのである。
「オケさま、ヲケさま。根日女はやはり皇子様らのお望みに応えられませぬ。賀茂の国を去って大和の地には参ることができませぬ。おふた方をお慕いする根日女の心に偽りなどありはしませぬが、わたしにはその前に守らなければならぬ大切なものが、限りなくあるのです。それを見捨てるなど、どうしてわたしにできましようぞ。この地にとどまるのがわたしにさだめられたものなです!どうぞお許しくださいませ」
 根日女は深々と頭を下げた。もはや何物にも妥協を許すまいとする強固な意志が、その姿から溢れていた。
「わかった。ならば根日女よ、われらと約束してほしい。大和の都を平定し平穏を取り戻せれば、われら兄弟のどちらかが大和の大王になるだろう。その暁には、そなたが守ろうとする大切なものを、われらが守ってやれる力を手にする。そうなれば、そなたに、もうなんら異存はなくなろう。その日を胸に刻み、われらは都に戻る。根日女よ、必ずそなたを迎えにくる。約束は断じて違えぬ。その日を待っていてくれ。いいな」
 固く誓って、オケとヲケの兄弟皇子は大和を目指して急ぎ旅立った。
 心ここにあらずと見送る根日女だった。
 許麻は娘の思慕を翻意させたものが、おのれの存在や賀茂の国の愛する民人らに向けた慈愛のゆえと気づいている。
「根日女よ。そなたはこれでよいのか?これで……!」
 父が何度も暗黙の裡に兄弟皇子とともに大和へいけと促しているのに気づく根日女だった。だからこそ、根日女はこの地を離れられないのだ。わが身を愛してくれる多くの民人を、父を見捨てられないのである。
 根日女は父許麻に優しく透き通った頬笑みを与え、天女のごとく静かにかぶりを振った。
   

 許麻が部屋に入ると、年のいった次女が、いつもと変わらぬ淡々とした仕種で頭を下げて退出した。根日女が二歳になった頃からきょうまで根日女の傍で律儀に仕えつづける老女だった。
「…こ、これは…おとうさま……」
 根日女はおのがままならぬわずらいの身体をしきりに起こそうとする。
「そのまま。そのままでよい、根日女よ」
 許麻は慌て狼狽えて膝を落とすと、根日女の背にそーっと手を当て、静かに元の姿勢に寝かせた。
「……申し訳ありませぬ…おとうさま……」
 消え入るような声だった。許麻は点を仰いだ。昔はあのように麗しくて愛らしい天女の声をかくありやといったものだったのに。許麻は父親として切ない思いをまたしても噛み締めながら、目をそらせて何度も、何度も頷いた。
「きょうは気持ちのいい日だ。うーん。春が、もうそこまでやってきておる」
 許麻は差しさわりのない話題を選んで喋ることになれてしまった。根日女が病床に伏してから、それだけ長い時が過ぎた証拠だった。
「春になれば、そなたの病も、またよくなろう」
 気休めの言葉に過ぎぬのは、父である許麻が一番よく判っていた。根日女の命は決して春まで持ちはしないだろう。 (続く)
(おーる文芸誌・独楽1995年3月掲載)
 img018.jpg

故郷のお話2(根日女昇天2)

その月日を根日女は兄弟皇子のどちらとも選べぬままに過ごしてきた。心根が優しいゆえに根日女は、わが身に熱い思いを寄せてくれる彼ら皇子らの心を傷つけることなぞ考えられなかったのである。
 オケとヲケの兄弟皇子は、先の大王の執拗な追跡の手を逃れるために、苦難の道を共に助け合い励まし合い生きて来ている。艱難辛苦を共有するなかで培われた兄弟愛と強く育った信頼と絆は並みなことでは崩れぬ強固なものとなっていた。たとえ根日女であっても容易には踏み込めぬ何かが二人にはあった。
 先の大王の崩御は、大和朝廷の勢力図絵を一挙に塗りかえた。大王には跡を継ぐ子がなかった。そこで担ぎ出されたのが、大王と腹違いになる妹、オシヌミノイラツメだった。暗殺された前の大王と同腹の兄妹ではあったが、女だからと、一族殺戮の危機から辛うじて逃れていた。そのイラツメが大王なきあとの大和の権力の中枢に奉られたのである。
 幸か不幸かイラツメはオケ、ヲケの父である暗殺の憂き目にあった前の大王とは同腹の兄妹だった。イラツメは兄の忘れ形見の兄弟皇子が播磨の地に隠遁していることを知った。彼女は迷うことなく播磨に勅書を送ると、兄弟皇子を次の大王に据えるべく兄弟皇子を都に迎えようと考えた。イラツメに命じられた使者は、賀茂の里に隣り合わせる志染の里に直ちに向かった。兄弟皇子は志染の長のもとに身を潜めていたのである。
 使者を迎え、大和の国の実情を知らされた兄弟皇子はイラツメの期待に応えるべく決意を固めた。しかし、根日女との決着しようがない愛を、時が流れにまかせて自然の解決を委ねていた兄弟皇子は、躊躇せざるを得なかった。されど、つまるところ彼らが大和の都に戻ることは、暗殺された父王の無念を晴らすための第一歩だった。追っ手の影に怯えながらひたすら耐えしのんできた。兄弟皇子が抱き続けた夢を実現する環境は都にしかないのである。結局、兄弟皇子は都に戻る道しか選択肢はなかった。
「われらが国づくりに励む姿を、根日女、そなたに傍で見守ってほしい。そなたは、大和の妃に、大和の国母となるために、われらとともに都にのぼると運命づけられておるのだ。われらと出会ったは、まさしく神のお導きだったに間違いあるまい。さだめに準じて、われらとともに都に参られよ」
 都へ出立する前日。別れの宴席で、したらか呑み過ぎた祝い酒の酔いに任せて、兄皇子のオケは、その知的な風貌に似つかわしくない、未練をあらわに露骨に過ぎる熱情を持ってしつこく根日女に迫った。兄と違い野性的な風貌の弟皇子のヲケも、血の気の多さを丸出しで、根日女に翻意を訴えた。
「そなたなしでは、もはやわしの明日はないも同じ。わしは、根日女という女人が好きじゃ!そなたが好きじゃ、そなたが欲しい!都に参ってわしの子を産んでくれい!」
「……」
「ヲケ、見苦しいぞ。心を抑えよ、人前じゃ。われらが根日女に恥をかかせてはならぬぞ」
「なにをいうておる。ならば、兄者は、兄者は根日女を欲しいとは思わぬか?なんと根日女への思いは、口先に過ぎなかったか!」
「そうではない。根日女を想う心はお前には負けぬ。しかし、いかほどに女人への思いが強かろうと、それに甘んじたあまりに野蛮な振る舞いは許されないのだ。わしらは男じゃ、わしらは大和の血を継ぐ気高き皇子なのだ」
「馬鹿な。男が女人を好きになったら、是が非でもその心をわしが独り占めにしたいのは道理だろうが。いかに競う相手が敬愛すべき兄者じゃとて、恋敵にはわしは遠慮せぬぞ。いいか!わしの根日女への思慕は何人にも劣りはせぬ!」
「ヲケよ。この兄が根日女を想う心根が、そなたに負けると思うておるか。愚かだぞ、ヲケよ。男が女人を愛する心に優劣などあろうはずがないではないか!」
「ならば、ここで決着を図ればよい。兄者よ、いかに!」
 酒の勢いを借りているだけではない。根日女との別れを眼前に生じた激しい動揺が、これまで抑制をかけていた兄と弟のタガを外させ、ここぞとばかり心情を赤裸々にぶつけ合うのだった。
 根日女はわれを忘れて二人の間に割って入った。
「お待ちください!わたしごときのために、ご兄弟が醜い争いをなされてはなりませぬぞ」           (続く)
(おーる文芸誌・独楽1995年3月掲載)
img012.jpg

スマホデビュー

ついにガラケーがアウトに。
最後までガラケーと、
意固地に担っていましたが、
携帯が自滅してしまったら
どうしようもない。
もう修理は無理。
仕方がなくらくらくスマホを。
コロナで
営業自粛中の携帯ショップへ。
若いスタッフの対応に、
披露さえ覚えました。
立て板に水調の説明は、
見事と感服ですが、
こちらは、
見事にチンプンカンプン。
帰宅後、
トリセツをもとに
設定にかかりましたが、
外野席が煩いことうるさいこと。
妻も娘も
スマホに関しては
大先輩。
スマホデビューのシルバーが、
奮闘(?)の甲斐もなく、
遅々と進まぬ様に、
じれったくて堪らず、
口出し手出し、足……は
さすがに出なかったが、
とにかくお節介が過ぎる。
堪忍袋が敗れる寸前に、
ようやくスマホが使えるように。
ただし、
功労者は
外野席の二人。
いやはや……。
img024.jpgimg027.jpgimg026.jpgimg025.jpg

故郷のお話

ふるさと紙芝居の
制作にかかる前に
これまでに書いた
故郷のお話を読み直しています。
今日は
その一部をアップしてみました。

根日女昇天(!)
屋形の縁より眺めると、かなり大きい墳墓が築かれつつあるのが一目瞭然だった。
 墳墓を取り囲むように池が掘られている。賀茂の国の民人が総出で工事に取り組んでいる光景は壮観そのものだった。墳墓はもうすぐ、この辺りの河原を埋め尽くすなんとも見事な玉石で飾られることになっている。
(あれに葬られるのは、わしが先か、それとも……?)
 許朝(こま)は、雪のように白くなった髭に覆われた顔をさすりながら、目を宙に泳がせた。
 この播磨の一隅に位置する賀茂の国を支配する豪族の長、許麻はかなりな高齢だった。許麻と同じ頃に生を受けた国の民人らの大半は、既に神のお召しで昇天してしまっている。総ては逆らいようのない神の御意志である。おのれがここまで生き長らえてきたのも、神がそう望まれたに他ならぬと、許麻は考えている。
 肥沃な土地と温暖な気候に恵まれた賀茂の地で、民人はらの暮らしはかなり裕福で平穏だった。豊かな自然の恩恵を受けた賀茂の国力は、他国から羨望視されるほどだった。
 長の許麻が時代を見通す力と統率力を兼ね備えていたからだったが、当の本人は、賀茂の国の守り神と崇められた妻カナヒメや、その後を継いだ娘がいたればこそと思っていた。
 その妻は二十年も前に神に召された。そして、最愛の娘、根日女(ねひめ)は、いま寿命が尽きようとするほどの病臥に伏せっている。生死の峠を、もう幾度彷徨い続けてきただろうか。近頃はただ単に生き長らえているとしかいえなかった。
(大和の都は平定されたと聞いた。それでいて、余りにもあまりにも遅い。遅すぎるではないか。大和と賀茂の道程は、さほど遠いとも思えぬに……?)
 大和朝廷の大王がみまかい、その後継を争った族内抗争が勃発した。広がった戦火に多大なる血が流され崩壊寸前にまで至った都は、あの類いまれなる能力に秀でた兄弟皇子の奔走で、ついに平安を勝ち得たのだ。許麻がよく知るオケとヲケの兄弟皇子の待望はかなった。
 許麻が統治する賀茂の国は彼らの戦いに全面的な支援体制を敷いた。大和朝廷の平定は、地方の有力な豪族である許麻と、その一族の強力な支えがあったればこそ成し遂げられたんである。
(あの日、根日女は、あの貴きお方あの懇願に応じるべきであった。さすれば、あれは…根日女は今ごろおなごの幸せを手にしておったのだ。それを……!)
 許麻は複雑な思いに揺れながら静かに振り返った。その視線の先に、許麻が愛してやまぬ娘、根日女が病に伏す部屋があった。兄弟皇子に求愛されたあの頃の根日女からは想像もつかぬ、衰えを隠せぬまま、ただ死ぬる火を待つだけの、絶望的な、あまりにも悲惨な姿が眼前に浮かぶ。
 尋常の美しさではなかった。紙が与え給うた神秘に包まれたこの世の女人とは思えぬ存在だった。女は愛されることで本能が働き、より美しく変身するという。それが、一人の愛ではなく、二人の見目麗しい貴公子が同時に求愛したのである。大和の都の母にと望まれたのだ。根日女が女神の如く光り輝いて見えたのも、けだし無理からぬ話だった。
 根日女の幸福の極みは、ほんのつかの間に過ぎなかった。求愛した二人の貴公子は、実に仲がいい兄弟であり、彼らは暗殺された先の大和
の大王の忘れ形見だった。さだめは兄弟皇子を、追われた都に再び導いた。彼らは大和の国の民人のための戦に身を投じるために帰国しなければならなかった。根日女を連れ帰って、大王の妃にむかえる意思を通そうとした皇子らの望みは、はかなくも潰えた。
 根日女は賀茂の民人らに賀茂の太陽とも崇められる存在だった。その太陽を永遠に沈めるなど根日女は考えるだけでも耐えられなかった。愛に応えるべきか?賀茂の国に希望と夢を与え続けるべきか?二者択一を迫られる根日女の懊悩は想像を絶するものだった。根日女が出した答えは、賀茂の国の選択だった。
 オケヲケの皇子らの父を暗殺し、支配者の座に着き、わが世の春を謳歌していたいまの大王が崩御したのは、兄弟皇子がね日女に愛を披歴した日から半年を経た時だった。彼らが都に迎えられる悲願の時がやって来た!         (続く)
(おーる文芸誌・独楽1995年3月掲載)
img009.jpgimg006.jpgimg005.jpgimg011.jpg

畑の危機管理

空模様がどちらつかずの日。
無性にイライラが募る。
何かしたくても
手は出ない。
手近にあるアルバムを
開いてみた。
昔々のフエルアルバムに並ぶ
なつかしい写真。
(あの頃はよかったなあ)
何てとりとめもなく思いながら、
現実をしばし忘れていた。

気を取り直して畑に出た。
夏野菜に水をやっていて気付いた。
端っこの畝に菊を移植しておいたのが、
一本寝転がっている。
よくよく見ると、
根こそぎ抜かれた状態。
そばに土を掘り起こした跡が、
(こりゃまずい!)
何かが畑に侵入した後だ。

慌てて近くの藪から竹を切り出してきた。
何等分かに専用器具を使って割った。
これを杭にして
防獣網を張り巡らすつもり。
古い網は
杭とともにもろくなって、
あちこちが目的を果たせなくなっている。
夏野菜を植え付けたときに気付いていたが、
田植えの時期ぐらいに張り直すかなんて、
お気楽に考えてしまった。
しかしことは急を要する。
いったん味をしめた害獣どもは
必ず何度も侵入してくる。
去年もサツマイモを根こそぎやられたっけ。
もう意地である。
効果は小さくても、
(この畑、頑張ってるじゃないか。
それに免じて程らいにしといてやろうか)
とイノシシやシカが思ってくれるかも知れない。
夢とロマンにいきる私は、
頬笑みながら
青竹を割り続けた。(ああ、しんど)
img004.jpgimg007.jpgimg008.jpgimg023.jpg


本に導かれ

9日は
私が運営している
Nまちライブラリーの
土曜日常設日。
とはいえ
ただいまコロナ自粛中。
ミニ図書館も
私が独占しているような始末。
イベント部門も
現在は閉店休業事態。
何とも言いようのない
怠惰な時間を
日々送っている。
書庫に並ぶ本を
時々引っ張り出して
読んでいるが、
殆どの本は、
社会人一年生で就職した
地方の本屋さんで購入したもの。
1500冊以上ある本の
内容は多岐にわたっている。
読んでいると、
当時の記憶が蘇ってくる。

考えてみれば、
酷い人見知りで
友達も作れずに
いつも独りぼっちだった私が、
自分の人生を手に入れるきっかけを
作ってくれたのが
小学校の図書室。
私と本の二人三脚人生のスタートである。
高校生になるまで、
学校の図書室にこもることが多く、
読書数は数えきれないほどだった。
親兄弟であり、
先生であった本。
高校生になった私は、
豊富な知識を武器に、
先生に存在を認めて貰えたのである。
それまでは影の薄い、
全く存在感のない人間だった。
本はそれを一変してくれた。
絶対なってはならない
生徒会長までこなせたのは、
やはり本で培ったものの
なせる業だったのだ。

また思い出にふけってしまった。
しかし、
本は最高の友達なのは
間違いない。(うん!)

img018.jpgimg020.jpgimg021.jpgimg022.jpg

メタボだっけ

何気なく乗ってしまった
ヘルスメーター。
絶句!
そうだよな。
コロナいらい
出歩かなくなっているし、
オイチニーなんて
毎日運動する根性も
習慣も
持ちあわせていないもんなあ。
「あら!あららら~」
汚れものを洗濯するべく、
脱衣所に侵入(?)の
妻のわざとらしい驚きの声。
10年前に
集団検診で
メタボ予備軍と
太鼓判を押されて、
それなりに気にしていたのに、
ここしばらく
それどころではなかったんだ。

よし、
今日から始めよう
ウォーキング!
思わず苦笑。
もう何度目の
決意表明なんだろう?
子供のころから三日坊主だと
思い知らされ
今や達観している。
長続きはしないよな。
しかし
やらないよりはマシだ!
頑張ってみよう、
三日でも。(大嘲笑)

img003.jpgimg004.jpgimg007.jpgimg008.jpg