爪切り

巻き爪になるよ」
私の足をチラ見した長女。
爪が変になったのはわかっている。
親指の爪など、
一般の爪切りで切るのが
無理になった。
それに年のせいで
爪切り自体が簡単にいかない。
「父さんの足、汚いからほっと来なさい」
妻がチャチャをいれると、
「私が切ってもいいよ」
さらっと言ってのけた長女。
介護施設の介護福祉士という仕事柄、
対処し慣れた事例なのだろう。
「とうさん、よかったじゃない。
爪を切ってくれるらしいよ」
妻が暗に仕向けたことだが、
当の私は躊躇した。
二十代から料理人をやってきた。
厨房では白い長靴をはくことが多い。
ムレて水虫にやられて……
酷い長年にわたる駆使でひどい状態だ。
人様に触らせるのは気の毒としか思えない。
「いいよ。何とか自分でやるから」
「ほんまに?大丈夫」
その場はそれで収まったが、
翌日、なんと分厚くなった爪専用の爪切りを買ってきた娘。
「父さん、足出しなさい」
後は娘の独壇場。
衛星用の手袋をはき、手早く爪を始末してくれた。
「汚い爪やのに、親やからゆうて近頃の娘、やってくれへんで」
言葉とは裏腹に妻の顔には安堵と喜びがあった。
父親の爪を切る娘。
それを取り囲む家族の笑顔。
これを幸せと言わずになんという。(ウン)
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