記憶の風景・新米その3

日曜日。
毎年恒例の草刈りと道普請のひだ。
朝8時営農倉庫に集合したのは40数名。
いつも集まる顔ぶれだが、
年々年を食って減るばかり。
既にわたしの4年後輩の元銀行員さんが、
寝たきり状態だと聞いている。
11時過ぎまで草刈りの機械音が
村中に響き渡った。
最近膝が痛む。
方法の体で
なんとか草刈り機を操作しきった。
午前の部はなんとか無事終了。
しかし、
今日は午後の部が控えている。
午後は溝さらい。
田植え前だ。
旧水路と排水路の確保のために、
U字溝に溜まった泥とごみをさらい取るのだ。
近年、イノシシの出没がはなはだしい。
溝を埋め尽くす土泥は
イノシシがミミズを求めて
そこらかしこを掘り起こした副産物(?)なのだ。
泥さらいはきつい作業だ。
それでもやるっきゃない。
年寄り連中の鼻息は荒い。
都会に出て行った子供たちが戻らなくなって、
奉仕作業に出るのは年寄り揃い。
今日は道普請や草刈りはクリアできても、
来年は?その先は?
なんか悲惨な状況を想像してしまう。
それが杞憂であることを念じて、
頑張るおじいちゃんたちである。
しかしまあ、この日は夏日で暑いこと。
休憩はかなり回数が増えた。
それでも夕方4時までには
作業を終えなければならない。
天の過酷な仕打ちに負けてはおられない。

目が覚めたのは6時前。
やはり疲れが出たようだ。
夕食準備を怠けるわけにはいかない。
さて何を作ってやるかな?

というわけで、
今日は記憶の風景・新米の最終章だ。

記憶の風景・その3(終り)

Sさんの手配でなんとか収拾はついた。取り返しのつかない失敗だった。ぶちのめされた思いを払拭できぬまま、バックヤードで在庫確認をしていると、副店長が顔を覗かせた。

「済んません。どえらい失敗してもうてから」

 反射的に謝った。

「もうええよ。今度から気ィ―つけて貰うたらいいだけの話やがな」

 そういわれても、重い気分から逃れられるわけではない。

「ここの仕事してたら、あんなミスなんぼでもあるんやがな」

「は?」

「発注間違いはしょっちゅうやな。あのSさんかて、昔はようやらかしたもんですねん。気にせんと仕事頑張ってくださいな」

 副店長は落ち込んでいるパートのおっさんを、慰めを兼ねて鼓舞しに来たのだった。

「いらっしゃいませ、お客様。こちらのハマチ、さっき捌いたとこです。いかがですか?」

 例の常連客に気付き、愛想よく声をかけた。ハマチの柵取りの新鮮さに太鼓判のいち押しをする。なにせ自分が捌いたものなのだ。

「ほうかいな。うん、こら新鮮や。貰おか」

「毎度有難うございます!」

 加工食品を半年担当した後、鮮魚部門に移動させられた。鮮魚のスタッフに穴があき、調理師資格を持つので、お呼びがかかった。

「行かんとき。加工食品におって貰わなあかん人材やのに。よっしゃ!うちが断ったるわ」

 思いがけない慰留は嬉しかったが、結局鮮魚に移った。Sさんの異議申し立ては、スーパーの思惑を覆すには至らなかった。そんな事情から白衣姿でお客さんの相手をしている。

「やるやないの。もういっぱしの商売人やな」

 商品補充するために飲料のケースを積んだカートを押すSさんは、すれ違いざまに、最高の褒め言葉をくれた。可愛い笑顔で……! 
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