愚痴る

別れが、
あれほど突然に
訪れるものだとは
思いもしなかった。
いつかは話さなければ、
いつかは
一緒にやりたかった希望が
跡形もなくなるなんて
信じられなかった。

それを兄貴はやってのけた。
弟をたったひとり残して
逝ってしまったんだぞ。

一つ違いで仲のいい兄弟だった。
兄弟喧嘩はよくしたが、
だれが見ても
仲のいい証拠だった。
どちらかが困ると
助け合ったものだ。
どちらかといえば、
弟のほうが
面倒をかける機会が
多かったかも知れないけど。

このまま年老いても、
二人はいつも仲のいい兄弟だと
信じて疑わなかったのに、
兄貴は一方的に
そこから退散してしまったんだ。

寂しかったし恨みもしたけど、
いまは兄貴の大きな存在感を
思い出の中に刻みつけている。
兄貴ならどうしただろうか。
兄貴ならどう怒っただろうか。
いつもそう思っている。

母も亡くなり遺った父は、
もう九十三だ。
後継ぎとして育った兄貴を
いまだに懐かしがっている。
「あいつが生きとったらのう!」
が口癖だ。
残った息子が
甲斐性なしの私だから
仕方がない。
黙って聞いてやってるんだ。

でも最近悩んでいる。
父親のそばにいてやることが、
私のできる親孝行だと
開き直っていたけれど、
世間の見る目は違うからな。

「よその子供らは
ほんまに稼ぎがええのう」

父の愚痴もそんな風に変わって来た。
今更金儲けや偉いさんに
なれるはずがないのに。
でも父の言葉は
身に染みて仕方がない。

兄貴だったら
どんな助言してくれるかな。
夢ばかり追いかける
現実離れした弟の生き方を認めて
応援までしてくれただろう。
兄貴が亡くなってから、
普通の暮らしをと頑張ったんだからな。
家庭を持ち四人の子供も育て上げた。
それじゃまだ駄目なのかな。
「アホか。お前はお前の生き方がある。
誰にも恥じることないわ」
兄貴ならそう言ってくれそうだ。

兄貴の笑顔を思い出したら、
スーッと気が楽になったわ。
兄貴の分も親孝行しないとな。

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