成長

「お母さんらが年を取って、
この家を維持できなくったときは、
こっちへよべるように、部屋を用意しとこうって
言ってくれてるの」
長女が妻と話している。
いま娘夫婦は家の新築に入っている。
設計段階で、
自分の親のことを夫婦で気にかけてくれているらしい。
「弟らが遠くで仕事しているし、
家にもう戻ってこないかもしれないし……?」
いろいろ考えている。
長女として、
自分が親に対してどうあるべきかを、
古風に考えられる娘に成長した。
想定外だった。(もちろんうれしい)
仕事は福祉介護士として特養で働いている。
身近に年老いた親たちのあれこれを見聞するだけに、
そんな考え方ができるのかもしれないが、
驚きでもある。
4人いる子供らの中で、
唯一大学に行けなかった子である。
生まれてすぐ難病で入院を余儀なくされている。
高熱に何日もうなされて、
もう駄目かと思わせた娘。
学校の勉強はついていくだけだったっけ。
そんな娘が、
選んだ道は、
母親と同じ福祉の道だった。母親は障害児の保母だった。
「わたし、おじいちゃんおばあちゃんのお世話だったらできると思う」
単純な動機だった。
わたしたち親が最も忙しい時期の子だった。
夫婦で店を切り盛りしている間、
ずーっと田舎のおじいちゃんおばあちゃんに育てられている。
その影響が色濃い。
高校は福祉科に進んだ。
そこで資格を取れなかったので、
地元の福祉専門学校へ。
高校も専門学校も、
そりゃ大変だった。
「わたし馬鹿だから、でも休まないから」
勉強はビリでも、彼女はすべて皆勤を通した。
学科は弱くても、実技は合格点だった。
資格試験は何日も前から学科の猛特訓。
わたしと妻がつきっきりで頑張った。
結果は合格だった。
そして採用試験もクリアして特養の職員となった。
以来、10数年!
恋人もできて結婚、
そして孫までも。

(この子は人並みの人生をおくれるだろうか?)
と常に心配が尽きなかった娘が、
他の子供以上の生き方を見せてくれている。
そんな娘の姿に接するたびに
親の冥利に尽きる。
(おとうさんとおかあさんのことはいいから、
自分の家族と仕事に頑張れよ)
口には出さなくても、
いつも娘に呼び掛けている。
そして、
優しく育った娘に、
感謝の昨今である。
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