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<<   作成日時 : 2016/05/25 00:08   >>

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表情もはっきりしない距離だが、何かしゃべくりあっている。休憩は確かだ。

「こっちも休もか」

「そやな。わしらだけ働いてるのんも、なんやもんな」

損得をはっきり口にしなくても、向こうが休めばこちらも休むのが当然だと打算が働く。まして仕事じゃない奉仕活動なのだ。いったん尻を降ろすと、だらだら半時間以上休むのが常である。

「○○はん。お宅の娘はん、いっつも朝早いのう」

「遠いとこの学校やで、しゃーないねん」

 すぐおしゃべりが始まる。村の男たちはよくしゃべる。もともと無口で付き合いの悪い僕も、ここは無理して話し相手になる。

「みんな年寄りばっかりになってもうた」

「若い子ら外に出たら帰って来よらんさかいなあ」

「そんな時代やからのう」

 僕の息子らも遠くで就職して戻らなくなった。大学時代は、盆正月や祭りには必ず帰郷したのに。彼らは巣立ってしまった。

「△△はん、入院したらしいやん。癌やと」

 深刻な話題に飛ぶ。話の種は多岐にわたる。男たちの話を耳に入れて、いっぱしの消息通になるって勘定だ。

そんな中、役員は忙しい。草刈り機の燃料を軽トラの荷台に積み、各部署をくまなく走り回る。燃料切れは仕事の遅滞につながる。

計画通りに作業を済ませないと「後は役員はんに任せたわ」だ。たまったものじゃない。

「役員は仕事したらあかん。みんなに仕事さすんや。楽して元取るんが役員や。覚えとき」

 何年か前に僕が役員に着いたとき、前任者に念押しされた。(役員は仕事をしたらあかんのや)何度も復唱したものだ。

「ご苦労さんです。ガソリンあるやろか?」

 正確にはガソリンではなく、混合ガソリンだ。草刈り機のタンクは小さい。燃料はすぐなくなる。「シュポシュポ」と手動ポンプでタンクを満たす。ちょうど満タンは難しい。多少こぼしてしまうのは、いつも通りだ。

「よその村は、来週作業するらしいですわ」

「そらそうや。ゴールデンウィーク中に、若いもんも出にくいやろさけ」

「うちも、変更したらええ思うんやけど」

 役員も立ち話を始めた。こうしてとりとめもなく話は続く。結論は出ない。

「ほなら、あともう少しだけでっさかい、よろしゅう頼んます」

 頭を下げて役員は次に向かった。普段あんな低姿勢はめったに見せまい。役員はつらいものだ。体験者として、同情を禁じ得ない。

「よっしゃ。ほな気張りまっか」

「あと二時間ほどや。すぐ終わりますわな」

 作業を頑張ろうという気はない。とりあえず予定時間まで程らいでいいと思っている。帳尻さえ合えば文句はないだろう。それが共同作業のやり方だ。
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