ドカン!

「助手席に乗ったら、絶対に眠っちゃ駄目だ。隣で居眠りやられたら運転する人に伝染するんや。それで運転手がウトウトしたら、マイ違いなく事故を起こしよる」
 長距離のドライブや深夜の送り迎えの際に、同乗者に口を酸っぱくして注意を促してしまう。あいてがどんなに嫌な顔をしようと関係ない。
 46年前の強烈な体験が、いまだに尾を引いている。
 助手席にいたわたしの迂闊な居眠りが事故を呼んだ。眠りはまたたくまに運転手にうつると、身に染みて教え込まれた。
 深夜だった。遠い親戚からの帰途。まる一日うんてんする兄をよそ目に自分だけが疲れたかのように助手席で鼾をかいて爆睡のわたし。
「ドカン!」という衝撃音に、驚いて跳ね起きた。車の鼻先に電柱が食い込んでいた。そして、水田に転がり落ちた車。兄は額から血を流していた。
「いつのまにか眠気に襲われてしもうたんや」
 後日、兄は当時の状況を詳しく教えてくれた。それでわたしの居眠りが招いた事故だと悟った。
 心地よい眠りは、寝具のうえだけにしとけばよかったと後悔しても、その時は手遅れなのである。
(2014・3・18原稿)

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