月からの贈り物

月からの贈り物

 子どもの頃、いたずらをすると、夜でも外へ締め出され、闇の恐怖を味わった。当時の夜はそれこそ真っ暗闇だった。だから、暗い中を出かけるのには、ずいぶん勇気がいった。
 上級生になると、家から約500メートルの距離にあった公民館で行われていた珠算塾に通い始めた。
 だが、夜に通うと、とても遠くに感じた。唯一の頼りは懐中電燈。足元を照らして走った。手提げ袋に入れたソロバンと筆記具がカタコトカタコトと鳴って、そのたびに怯えた。
 そんなある日。帰り際に空を見上げ、そこに広がる幻想的な光景に目を奪われた。
 空にくっきりと浮かぶまん丸の月。満月だった。月の光というプレゼントに、私はしばし心を奪われ、そのまま立ち尽くした。
(読売・2014年4月13日掲載)

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