コラム・7 男が泣くとき 元来、涙もろいほうだから、感動的なテレビドラマを見てはしょっちゅう涙ポロポロで、妻や子どもらに呆れられている。 だから生まれて40数年、限りなく泣いているわけだが、そんな中に強烈な印象で記憶に刻まれている涙がひとつある。 三十三歳にしてようやく漕ぎ着けた結婚式。そして、両親への花束贈呈。その瞬間、見てしまっ… トラックバック:0 コメント:0 2015年03月07日 続きを読むread more
コラム・6 史上最大のドジ? 8月29日、ひとつ年上の兄貴が急逝した。まだ3人の子どもは父親が必要な年代なのに、何ひとつ言い残すことなく亡くなってしまった。 「おい、仕事に行ってくるぞ」 と明るく出かけて行った兄貴は、仕事中に事故死してしまったのである。兄貴の仕事は板金業で、建築中の工場の高所から墜落したわけだが、もう20年以上のキャリア… トラックバック:0 コメント:0 2015年03月06日 続きを読むread more
コラム・5 結婚式エピソード 「エッ!!?ウッソー、こんなとこでするの?」 友人たちがいっせいに驚きの声をあげた。 豪華な結婚式が普通の時代に、町の集会室での披露宴。料理は仕出し屋さんからの出前。集会室の畳も気のせいかすり減っている感じ。 でもお金のない私たちを配慮した夫のご両親の手配された会場に不満などありません。そして、夫の友… トラックバック:0 コメント:0 2015年03月05日 続きを読むread more
禁煙喫茶店の顛末記 禁煙喫茶店の顛末記――鉄則破りの末路? 実は小生、商売の鉄則を逸脱したせいで、8年間盛業を続けた喫茶店を引き継いで、わずか半年で閉めた愚か者である。 その店とは『禁煙喫茶店』。われながら、よく考えた末に始めたアイディア物だと自画自賛で始めたのだが……。 そりゃそうだ。もともと喫茶店とは珈琲をいっぱい、煙草を一服、というと… トラックバック:0 コメント:0 2015年03月04日 続きを読むread more
好きこそものの上手なれ 好きこそモノの上手なれ 病院に着いたのは深夜。母危篤の連絡に取るものも取り合わず車を飛ばしたのだが、結局一時間三十分近くかかってしまった。閑散とした病院の駐車場に乗り入れて、急いで携帯電話を手にした。守衛室に連絡を取った。 「表に回って下さい。いまドアのロックを外しますわ」 何とものんびりした口調だった。しかし、これで病院に入れ… トラックバック:0 コメント:1 2015年02月22日 続きを読むread more
コラム4 ニッコリ、車掌さん 幼稚園と小一の子を連れ、二歳の子をだっこして大阪へ夫婦連れで出かけるはめに。夏休みでJRも阪急電車もギュウギュウ詰めで、座れることはまず絶望的でした。 所用を済ませて帰る電車もやはり立つしかなく、その二人の子も、末っ子をだっこし続けの夫も、もう限界の様子で、ハラハラ。 その時です。通りかかった阪急電車… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月21日 続きを読むread more
コラム2 道の駅 鳥取に父方の親戚がある。周囲を深い山に囲まれた田舎町だった。ちょいちょい用事で出掛けた。峠を越えて山の中を延々と車で走ると、ようやく到着する。途中休憩する施設など皆無で、疲れを抱えたまま往復した。 今は峠を越えずに済む快適な道がついている。そして、路線に道の駅が何か所か出来た。おかげで、楽しみが生まれた。 地元の野菜や… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月20日 続きを読むread more
雨上がりその1 雨上がり こう雨がしつこく続くと、やたら腰や足の関節が痛んで苛立って来る。さすが年齢を感じてしまう。おとなしく引っ込んでいるのが最良の方法なのに、じっとしているのは辛い。 しかし雨では仕事も無理だ。屋内ならまだしも、いま請け負っている仕事は屋根に上がっての作業が中心だ。いくら急かされても、手の付けようがない。ただ我慢、我慢な… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月16日 続きを読むread more
花嫁の父からの報告 バレンタインディー。わたしには人生でベストテンに入るしあわせの一日になりました。31になる長女が7年交際してきた彼(父親は全く知らなかったのですが!それが母親はしていたとか。父親ってそんなものなでしようかね。複雑だけど、結果よければなんでも良しとすべきですね)とついにゴールに!神戸のハーバーランドのブライダル式場に家族で向かいました。結… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月15日 続きを読むread more
ゆらゆらゆ~らりゆるぎ岩・完結 リューゴとお父さんは手をつないで『ゆるぎ岩』の前に立ちました。 「リューゴはお父さんよりもいい子だぞ。だから本当は片手でも大丈夫なのに、初めてで緊張したんだろ。うん、大丈夫、今度は揺れるさ」 お父さんはリューゴに片目をつぶって合図すると、大きく頷きました。しっかりと握り合ったお父さんの手の温かさが、リューゴに勇気を与えてくれます。… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月14日 続きを読むread more
ゆらゆらゆ~るりゆるぎ岩・その3 『ゆるぎ岩』の感触はひんやりしています。それにザラザラしたものが手のひらにくっつきました。 (お願いだよ。『ゆるぎ岩』、揺れてよ。ぼく、ズーッといい子でいたんだから。これからも、もっともっと頑張っていい子になるんだから) リューゴは自分の手に二倍はありそうな岩肌の手形の枠の中へ手を当てました。 「うん。よーし!じゃあ押してみろ」… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月13日 続きを読むread more
ゆらゆらゆ~るりゆるぎ岩・その2 お父さんは嬉しそうに説明してくれました。 「お坊さんは村の人たちにこう言ったんだ。この岩は、いい心の持ち主ならば、ちょっと押すだけで揺れるが、悪い心の持ち主は、どんなに力をこめて押そうとも決して揺れない。びくともしないだろうってね」 「フーン。不思議な力なんだ」 「そうなんだ。だから、村の人たちはいつ押しても岩がちゃんと揺れてくれ… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月12日 続きを読むread more
ゆらゆらゆ~らりゆるぎ岩・その1 ゆらゆらゆ~らりゆるぎ岩 リューゴの住んでいる村は、豊かな山々に囲まれた盆地にあります。春、夏、秋、冬と季節が変わるたびに、いろんな表情を見せて楽しませてくれる、深い森がいっぱいの山々です。その山には、ズーッと昔からある神社とか、伝説の場所とかいろいろあるのです。 リューゴは山の中腹にある『ゆるぎ岩』が大好きでした。小さ… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月11日 続きを読むread more
周囲からの好意 周囲の好意 「もう限界だな、店を閉めよう」 夫の沈痛な言葉に頷くしかなかった私です。 夫がこの店を始めて一年後に私と結婚、以来八年間夫婦が手を携えて切り盛りして来た愛着の深い店を閉めてしまう話では明るくなれるはずもありません。 夫の体調不安、店の経営不振、三人目の赤ん坊誕生……と正に身動きの取れない状態にありました。こ… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月10日 続きを読むread more
挫折からの挑戦 挫折からの挑戦 多感な高校時代。希望に胸ふくらませて入学した普通高校を、ある事件を起こして中途退学を余儀なくされた。このことで刻み込まれた挫折感は、改めて受験し直して通学するようになったS工業高校にまで尾を引くはめになった。 クラスメートは一年後輩ばかりで、まるで落第生気分だった。それに学びたくて選んだ電気科ではなかったことも… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月09日 続きを読むread more
父 父 父であることは さほど 難しくはありません それでもー 結婚を決めた 娘に ニコニコと 笑顔で頷いてやった それでもー 父であると 自信を 取り戻すための 時間は もうほとんどありません それでもー トラックバック:0 コメント:0 2015年02月08日 続きを読むread more
縁あるひとたち・完結 太吉が長男の忠行の事故死で受けたショックから解放されるまで一年以上かかった。良一は仕事を終えると毎日太吉の様子を見るために家に通った。憔悴しきった叔父を見る度に居たたまれなくなったが。それでも良一は通い続けた。太吉は実の父親以上の存在だったのだ。その叔父がくるしんでいるのを見て見ぬふりなど出来なかった。 太吉がショックから脱した一… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月07日 続きを読むread more
縁あるひとたち・その2 あれからもう四十年も経った。良一は立派に一人親方で仕事をこなしている。妻と娘二人のしあわせな家庭も得た。そんな今も、あの海老の尻尾に涙の味が加わった記憶が時々よみがえる。 「もうすぐやったな?」 太吉に訊かれて、真一は現実に引き戻された。パチパチと火の粉を勢いよく跳ねながらたき火は燃え盛っている。「いや、建て前はちょっと遅れそうな… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月06日 続きを読むread more
ほんの束の間 ハイウェイバスは快調に走った。名古屋に着いたのは夜の十時過ぎ。まだ時間は充分ある。名鉄の駅に急いだ。目的地は東岡崎駅。 定年以来、何とも空しい日々を送っていた私のもとに、一通の手紙が。開けてビックリ!とはこの事だった。 「今回のエッセー下田歌子賞にあなた様の作品が『最優秀賞』に選ばれました」 寝耳に水とも思える朗報だった。賞金… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月04日 続きを読むread more
誘惑 坂手将太は刺身包丁でマグロの柵をひき続けた。三千台の切り数が必要だった。イカ刺しとサーモンはすでに数を切り終えた。凍えた手は神経がかなり鈍くなっている。 ゾクゾクする。足元から厳しい冷気が伝い上がる。生ものを扱う調理場だった。一年の大半は冷房を効かせた部屋となる。厳冬期はさすがに冷房は止められたが、ストーブなど暖房手段の持ち込みは禁… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月03日 続きを読むread more
誕生!家族っ子、すず実・完結 みんな輝きだした 「お母さん、このごろ、えろう優しいなったん違う?」 ある日、奈津実がポツンと言った。 「なんで?」 「ポンポン言わんようになったやん。そいに一緒に勉強してくれるようになったわ」 ハッとした。 そうだ。すず実誕生以前の私は仕事ひと筋だった。精薄児の通園施設保母の仕事に打ち込んでいた。子どもたちへの愛… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月02日 続きを読むread more
誕生!家族っ子、すず実 すず実は家族っ子 ただいま、わが家の一日はすず実で始まり、すず実で終わる。年齢が離れているだけに、お兄ちゃんお姉ちゃんらにも、それに文句はなさそうだ。どうやらすず実は『家族つ子』になりそうだ。 長女はわたしと夫が商売で忙しい時期に生まれたせいで、夫の実家のおばあちゃんに育てられた『おばあちゃん子』。長男は当時やっていた喫茶店… トラックバック:0 コメント:0 2015年02月01日 続きを読むread more
誕生!家族っ子、すず実 誕生!家族っ子、すず実 きょうだいは多いほうがいい まったく躊躇もせず悩みもせずに、本当に自然体で妊娠と出産に臨んだ4人目の赤ちゃんが、わが家の幸福の使者、すず実である。 「男の子が二人屋のに、女の子は奈津実1人じゃかわいそうでしょう。奈津実に妹をつくってやろうよ。きょうだいは多いほうが頼もしくていいじゃない」 「そうや… トラックバック:0 コメント:0 2015年01月31日 続きを読むread more
根日女昇天 播磨風土記3000年記念歴史小説 根日女昇天 屋形の縁より眺めると、かなり大きい墳墓が築かれつつあるのが一目瞭然だった。 墳墓を取り囲むように池が掘られている。賀茂の国の民人が総出で工事に取り組んでいる光景は壮観そのものだった。墳墓はもうすぐ、この辺りの河原を埋め尽くすなんとも見事な玉石で飾られることになっている。 (あ… トラックバック:0 コメント:0 2015年01月26日 続きを読むread more
みずみずしい野菜は誰のおかげ みずみずしい野菜は誰のおかげ? わが家の家庭菜園は、この春、妻が「自家野菜で家計を補うのよ!」とえらく張り切って始めた。 が、いつの間にやら、妻はその役割を放棄し、畑を耕し野菜を育てるのは、私の役目になってしまったのだ。 そんな時に限って、酷暑渇水という大変な夏が来るから、オレはついていない、畑の土はカラカラで、野菜を枯… トラックバック:0 コメント:0 2015年01月25日 続きを読むread more
クローン羊ならぬクローン人間? クローン羊ならぬクローン人間? 八十歳を過ぎてから大病を患った義母。その介護と仕事を、やはりご老体なのに懸命にこなしている義父。夫の生家はすぐ近くなのに、なかなか手助けができずにいる自分がじれったいというか情けないというか……。 わが家は高校生二人、中学生一人、保育園に通う末娘を抱え、経済的にも時間的にもまったくゆとりのない… トラックバック:0 コメント:0 2015年01月24日 続きを読むread more
口は出すけど手は出さない 口は出すけど手は出さない 「きょうの休み、おとうさんの畑仕事手伝うてくれや」 「えーっ、ぼく、遊ぶ約束してんのに」 「あかんのか?」 「う……ええけど」 4年生の息子、誠悟はしぶしぶといった様子でうなずいた。 「かまへんよ、遊びにいったらええから。約束してんでしょ」 そばで聞いていた妻がよけいな口を出してきた。 … トラックバック:0 コメント:0 2015年01月23日 続きを読むread more
愛のキューピッドは贈られた絵本 愛のキューピッドは送られた絵本!? 「誕生日おめでとう。私が一番好きな絵本、プレゼントします」 はにかみながらも、おしゃれなリボンのかけられた絵本の包みを差し出す彼女。保母1年生の彼女にとって、絵本は身近なもののひとつなんでしょう。 付き合い始めて半年、ひとまわり以上の年齢差もあってなかなか進展しない間柄に、悩みジレンマが… トラックバック:0 コメント:0 2015年01月22日 続きを読むread more