おじいちゃんの凧

「しゃーないやっちゃのう」
 口とは裏腹に喜色満面の父。
朝起きると
夏休みの宿題が出来上がっていた。
見事な色彩の和凧だった。
幼いころから
お絵かきや工作が
大好きだったと自慢する父。
息子のために
せっせと仕上げた作品は、
よく入賞した。
おかげで私も自然と
お絵かきがうまくなった。
「おら前も
お父ちゃんに似てしもたんやなあ」
 二十年後、
やはり笑顔で孫のため
夏休みに和凧を作った父。
描きなれた和凧の武者絵は、
私の子供たちを感激させていた。
 いま父は脳梗塞で病床にある。
意識も定かではないのに、
残しておいた和凧を
枕元へ持参すると、
不思議に反応してくれる。
 私に作ってくれたものは
残っていないが、
孫のために完成させた
夏休み恒例の和凧作品は十数点、
応接間の壁を占領している。
「ひいじいちゃんの和凧やで、
綺麗やろ」
 帰郷した家族は
自分の子供に自慢する。
じいちゃんの和凧は
家族の絆を担っている。
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