花爛漫

窓から望める庭に、サルスベリとムクゲの花が暑さに負けず、咲き誇り。夏バテを一瞬忘れさせてくれる。花木を植えるのは両親の影響が大である。最も積極的に植樹を薦めてくれた母は他界、父も脳梗塞で倒れて長らく療養している。ふたりが植えてくれた金木犀が二本、季節になれば香りのプレゼントをしてくれる。我が家のシンボルツリーともいえる桜の大木は春に必ず満開の花を披露、母が好きだった柿木をはじめとした実のなる木々が家族に式の楽しみを魔弾鳴く提供してくれている。あれは、30年前が始まりだった。
Uターンした故郷に定住、田んぼを潰した上に家を建てたのが三十数年前。周囲は赤土がむき出して無粋極まったが、周囲は豊かな山並みに囲まれた環境で、自宅の庭に花や木を植えるなど、思いつきもしなかった。
「ほれ、庭に植えとけや。なんもなかったら寂しいて、庭が泣きよるさかいに」
 椿に苗木を手にしていたのは母。悪い足を引き摺ってわざわざ来てくれたのだ。
「こんな田舎の家に庭は要らんやろ」
「庭の花や木は住んでる人の心に潤いを与えてくれるんや。お前が面倒くさかったら、母ちゃんが植えたる境、任しとき」
 母はしょっちゅう苗木を買ってきては、庭とも呼べない一角に植え続けた。無視するわけにいかず、庭の整備に取り掛かった。
「こんな木の苗が売れ残っとったで」
 父が植え付けたのは桜だった。
「毛虫がついて困るやんか」
「アホ。それを手入れしたるさかい、木は大きゅう育ってくれよるんやがな」
 父と母のお節介にいらだったが、庭はどんどん充実していった。
 金木犀の香りが庭を包み、ベニバナトキワマンサクの鮮やかな赤花、そして極めつけはさくらの大木。春には目を見張る桜模様を見せてくれる。ほかに椿、ドーダンツツジなど、四季を通じて庭を彩ってくれる。今は我が家の庭が癒しの場になっている。両親のどや顔を思い出しながら感謝している。
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