娘の料理人

 この春から働き出した新米保育士である、生真面目な性格の娘、慣れない仕事を懸命に取り組み、疲れとストレスを溜め込んだのだろう、めっきり食欲を失くしてしまった。
「大丈夫かな?」「あなたの子供でしょ、信じなさい」おろおろする私は妻に一喝された。「父親のできることをしてやればいいの」
 引退した仕事は調理師。毎日の食事作りしか、私にできることはない。ネットで若い女性が好むレシピを引っ張り出し、娘のための料理を作った。食欲のわかない娘が食事を残しても、懲りないで次のレシピに取り組んだ。
「お父さんの玉子焼き、おいしい」
 ある日、ポツンとつぶやく娘の顔を見直した。久しぶりに見る笑顔に、ウルウルした。
「今日の夕食、何がいい?」
 出勤前の娘に問いかけるのが日課となった。
「なんでもいいよ」とお決まりの返事。
 その声に張りと快活さが復活するようにと、ひたすら腕を振るう父親だった。
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