酷暑

夏日が続き、
一向に降る気配を見せない雨。

おかげで庭も隣接する畑も
乾き切ってしまった。
地面の表土が白く干上がっている。

それでも雑草はやけに元気がいい。
いくら引き抜いても頭を擡げる。
手を休めて汗を拭う。
暑さが体に応える年齢である。

見回す庭は静かだ。
(……いつからかな?)

「キャッキャッ」と
走り回る賑やかな末っ子を一顧もせず、
一心不乱に水を運ぶ子供たち。
家のそばを流れる小川から
水をバケツリレーだ。
花や植木を生かすために
懸命になれる。

「お父さん、
汗まみれで頑張ってるの、
見てられないって、
いってくれたのよ、
あの子ら」

冷やした缶飲料を運んできた妻が
笑顔で報告する。
上の二人は中学生。
いつしか親を気遣う子に育った。
それが父親には嬉しい。

「僕やって、
ちゃんと水やるんだから」

幼い次男坊の負けん気が笑いを誘う。
一人で黙々と水をやっていると
気は遠くなるが、
いまは親子が共有する
幸せな時間があった。

ふっと我に戻る。
庭の木陰でボーッとなっていたらしい。
暑さがドーッと蘇った。

あの日から半世紀。
家の周囲にあった田圃は圃場整備で
すっかり姿を変えた。
小川は埋められた。
子供たちは町に就職、
田舎を忘れて暮らす。
残された親は年を取ってしまった。

それでも、
いつか戻る子供のために、
庭の花木は枯らさない。
子供の記憶に刻まれた
原風景をきちんと残す。
ふるさとがある幸せを
子供につなごうと、
お父さんは頑張っている。

そんなことを書いていると、
台風襲来の話。
台風の暴風雨は避けられたらしいが、
梅雨前線による雨が降り出した。
恵みの雨である。

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