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ふる里加西市に保存された戦争遺跡がある。
生まれ育ち今も生活の場である
ふる里に暮らして六十八年。
その存在を全く知らずにいた。
だだっ広い鶉野飛行場跡は、
明石の免許試験所へ
自動車免許を飛び入り受験のため、
みんなが車の運転練習場に使っていた。 
そんな身近に接していたその広場が、
あの戦争中、
戦闘機紫電や紫電改のテスト飛行に
使われていたことを知る由もなかった。
まして、
その紫電改が
練習飛行中に鉄道事故を誘引し
何人もの死傷者が出た
負の歴史など知る筈がない。
当時軍部も事故を隠していたとか。
戦争にまつわる暗雲は
田舎も例外なく覆っていたのだ。
昨年、
地元の高校PTAによる『ふるさと講座』の一環に
『鶉野飛行場戦争遺跡めぐりウォーキング』が企画された。
当時ウォーキングにはまっていたせいで、
戦争遺跡めぐりの認識することなく参加した。
ところが
ただのウォーキングではなかった。
歩いたコースは鶉野飛行場の周囲に点在する防空壕、
弾薬置き場、地下指揮所、対空砲銃座…と
戦争の歴史を如実に見せつける遺跡群だった。
目の前にすると、
今も漂う
迫りくる重圧感に驚かされた。
「みなさんは、
この鶉野飛行場から
九州の鹿屋特攻基地を経て戦地へ赴き
二度と戻ることはなかった特攻機の若き飛行機乗りが、
何人もいたことを
ご存じだったでしょうか?」

スタッフの問いかけに、
参加者の誰もが無言だった。
特攻という言葉自体
ピンと来ない。
最近映画やドラマでお目にかかった
絵空事でしか捉えていなかった。
それが、
こんな平和でのんびりした田園都市の一角に
存在する飛行場から多くの若者たちが
命を的にした戦果を求めて飛び立ったのだと言う。
ショックだった。
特攻機を操縦した
若い飛行兵たちが書き遺した遺書は
地下指揮所跡の煉瓦壁に貼られてあった。
父母や妻子ども、兄弟姉妹、
友人恋人にあてた別れの手紙。
十代から三十代前半の
飛行兵たちの悲壮な決意と、
肉親への尽きない愛情が吐露されている。
国のために
死を余儀なくされた彼らの心情は
いかばかりだったのだろうか。
とても推し量れない。
戦争はいつも
不条理極まる犠牲を強いるのが
当然なのだ。

私の叔父もビルマ戦線で戦死した。
お盆に墓参するたび、
その無念さを思い偲ぶ。
墓地の入り口に並んで建立された、
名誉(?)の戦死者を偲ぶ
慰霊墓碑の中に、
叔父の墓碑銘もある。
立派な石柱に
刻み込まれた叔父の名前と
戦死した戦地名、戦死の日時、
年齢が…二十三歳…
いくらなんでも若過ぎる。
いつもお参りしながら、
叔父の無念さに
胸を熱くする。
生きていれば
なにかを成し遂げられたはずである。
その無限の可能性は
有無をいわさず奪われた。
理不尽極まる戦争に
腹が立って仕方がない。
手を合わせながら
叔父に訊いてみる。
(将来何をしたかったの?
誰か好きな女の人いたの?)
でも、
墓に眠る叔父は何も答えてくれない。
特攻隊飛行士たちの遺書に
釘付けになりながら、
ハッと気づいた。
彼らは叔父以上の無念を強いられたのだ。
生きる意志を捨てさせられ、
敵を道連れにして死ぬことを命令された
片道飛行だったのだ。
生を微塵も考えてはならない、
ただただ死ぬことを目的にした
飛行命令の冷酷無比、
それが戦争の正体である。
叔父以上の過酷な懊悩の中
運命を避ける道は閉ざされ
行くしかなかった悲惨さ。
それが戦争なのだ。
平和な現代に生きる私たちは、
ともすれば
戦火に散った多くの犠牲者たちの無念さを忘れている。
あの戦争悲劇の上に
いま生かされていることを忘れてしまっては、
次の世代に平和をつなぐ役割を担えない。

前に
国会で安保法案が通過した。
野党は『戦争法案』と主張する。
ともあれ決まるまでの過程に
納得できかねるものはあるが、
決まった今は、
その運用を
注意深く見守る必要がある。
危険な方向に国が舵を取らぬように、
みんなの平和意識を
確固たるものにしなければならない。
それが平和を感受する
私たちに課せられた役目なのだ。

鶉野飛行場滑走路跡沿いに設けられた
平和祈念の碑苑を前に
頭を垂れながら、
思うことはひとつ。
先人の間違いを
二度と繰り返さない。
平和は
傍観者が手にすることは絶対ない。
微力でもひとりひとりが
平和への道筋を
迷うことなく突き進むことが必須なのだ。

歩いて巡った『ふる里加西の戦争遺跡』は、
私に戦争の愚かしさと冷酷さとを
再確認させてくれた。
それは平和を考える
最高の動機となってくれたのである。
誰もが
戦争と平和を直視するに違いない
戦争遺跡の保存と公開は、
遺跡をもつ
わが故郷の責務だと確信する。

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幼いころ、
太平洋戦争を題材にしたマンガが
目立った。
中でもゼロ戦と、
若き戦闘機乗りの
青春と闘いの日々が、
漫画のコマを占めていた。


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