記憶の風景・母の死に目

九十三歳で
亡くなった母。

亡くなる前夜
ベッドのそばで付き添った。
荒い呼吸は
いつもと変わりなかったが、
少し様子が違った。
ふと気が付くと、
母に見つめられていた。
寝たきり状態になってから、
自分の意思を
伝えるすべを失った母が、
じーっと
息子を見つめていた。

「なんや?」
思わず母の手を取って
尋ねかけたが、
母は
荒い呼吸を続けながら
身じろぎもせず、
ただ見つめていた。
何時間も……。

翌朝、
病室を後にして帰宅中、
電話が入った。
『母危篤』
慌てて病院に戻ったが、
母の死に目に
結局立ち会えなかった。

前夜の母の凝視は
別れの訴えだったのだ。
母親っ子で
甘えん坊に育った息子に、
「母ちゃんもう逝くけど、
ひとりでも負けんように
気張るんやで!」と、
鼓舞してくれたのだ。

四人の子供を
立派に巣立てさせられたのも、
母の言葉なき励ましが
あったからだ。
(俺、
お母ちゃん子で幸せだったよー!)
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