背中

父は体が小さい。

幼いころから

「チビ、チビ」と虐められたという。

成長してからも

人の何倍も苦労を強いられたらしい。

 高校生になると、

父の背丈を追い越した私。

夏の暑い日、

ブリキ職人の父を手伝った。

屋根の狭い個所に

ラクラク入り込む父の小さい体。

普段目にしない父が、

目の前にいた。

「ええかげんな仕事出来んさかいな」が

口癖の仕事ぶりに

手抜きは見られない。

やっと取り付けを終えて

姿を現した父は汗びっしょり。

缶コーヒーを手渡すと、

あおるように飲んだ。

「ちょっと休んだらええのに」

「区切りをつけな休めん。

それが仕事や」

 汗をぬぐって、

また隙間に体をもぐり込ませる父の後ろ姿。

汗がにじむシャツに覆われた背中が、

これまでになく大きく見えた。

 体の小ささをカバーするために、

負けん気と根性で身に着けた職人技。

それに賭けた父の逞しさが

現れているのだ。

小さな父に

尊敬の念を覚えた瞬間だった。
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