そっと

失恋し、

人生真っ暗闇だった

青春時代のひととき。

会社も無断欠勤、

アパートの自室で、

布団を頭からかぶり

一日を送った。

ドアを叩かれようと

開く気もせず

立てこもった。

 そんな時、

郵便受けにコトンと

落ちたものが。

気になって覗くと、

切手の貼ってない封書が

一通あった。

封はされていない。

中身を取り出すと、

便せんが五枚。

墨で書かれた筆字。

思い当たるものがあった。

父だ。

 びっしり

文字が詰まった手紙と

思いきや、

あっさりしたものだった。

仕事場から連絡を受けたこと。

心配していること。

そして、

最後の一枚は、

父らしい正直な表現だった。

「いっぺん帰って来い。

風呂沸かしとくさかいにな。

ちょっと

ゆっくりしたらええがい」

 誰からだとは

書かれていなくても、

父の顔が思い浮かんだ。

馬鹿正直でお人好し、

それが父だ。

きっと毎晩風呂を用意している。

 夜遅く、

こそっと家に帰った。

ポケットに

父がしたためた手紙を

突っ込んでいた。
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