ゆるぎ岩・その5

「実はな、

お父さんのお父さんが、

一緒に押してくれたんだ」

「おじいちゃんが…

一緒に、

押したんだ」

「そうさ。

リューゴと同じ一年生の頃のお父さんは、

もうイタズラばっかりしてさ、

そんなお父さんが『ゆるぎ岩』を押しても、

揺れないだろうと心配したおじいちゃんが、

お父さんの手を取って、

一緒になって岩を押してくれたんだ」

「へえ」

「そしたらな」

「うん」

「揺れたんだ、

あのでっかい『ゆるぎ岩』が、

ゆらゆらと揺れたんだ!」

 お父さんは笑って、

大声を上げました。

「そうか。

おとうさんも……揺れなかったんじゃないか。

おじいちゃんの手助けがなかったら……」

 リューゴはホッとしてお父さんを見ると、

お父さんの目とぶつかりました。

次に『ゆるぎ岩』を見ました。

また、お父さんを……、

キョロキョロとリューゴの目は動き続けました。

「よーし!

今度はお父さんと力をあわせて、

一緒に『ゆるぎ岩』を押してみようじゃないか」

「うん!」

 リューゴは元気いっぱい返事をしました。

 リューゴとお父さんは手をつないで、

『ゆるぎ岩』の前に立ちました。

「リューゴはお父さんよりもいい子だぞ。

だから本当は片手でも大丈夫なのに、

初めてで緊張したんだろ。

うん、

大丈夫、

今度は揺れるさ」

 お父さんはリューゴに片目をつぶって合図すると、

大きく頷きました。

しっかりと握り合ったお父さんの手の温かさが、

リューゴに勇気を与えてくれます。

(よーし!)と、

なんでもやれる気持ちになりました。

「リューゴ、

まず『ゆるぎ岩』にお願いしようか?」

「うん。

三回手を叩くんだね」

 さっきお父さんがやっていたのを、

ちゃんと見ていたのです。

「よく覚えていたな、

リューゴ。

でもただ手を叩くだけじゃないんだぞ。

心の中で願いを込めるんだ。

ぼくはこれからもきっといい子でいるから、

揺れて下さい!って祈ってごらん」

「うん、

わかったよ」

 リューゴは神妙な顔になって、

『ゆるぎ岩』を見つめました。

そして心を込めて、

パンパンと手を叩きました。

お父さんも叩きました。

リューゴは何度も何度も、

胸のうちでお願いしました。

必ず揺れてみせてねと頼んだのです。

 「さあ、

やるぞ!」

 お父さんがリューゴの肩をポンと叩いて、

合図しました。

 リューゴとお父さんは同時に、

『ゆるぎ岩』に手を当てました。

リューゴはチラッとお父さんを見やると、

お父さんもリューゴに目を向けたところでした。

「フフフフフ」

 リューゴはとても愉快な気持ちになりました。

「ハハハハハ」

 お父さんも楽しくてたまらない風です。

 リューゴはいまお父さんと、

ひとつになったのです。

「そーれ!」

「そーら!」

かけごえがひとつになりました。

リューゴは無我夢中で、

手に持てる力を全部込めて押しました。

お父さんも力いっぱい押しています。

その迫力のすごさといったら!

「イチ、ニー、サン!」

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