本を読む

 高齢者の仲間入りして以来、愛読し始めたのが、松岡圭祐の千里眼シリーズ。とにかく面白い。肩ひじ張らずに読めるのがいい。
若い美女がヒロインという魅力だけではない。スピード感あふれるストーリーに緻密な取材がなされた舞台背景の描写。これぞエンターテインメント小説の最高峰ではないか。
今回読んだのは『千里眼 美由紀の正体』(上・下)。ヒロインが暴走する遠因は、消された記憶の真相の中にある。彼女が大切にして来た思い出がすべて偽りだと言う。この設定ひとつとっても、読者をひきつける要素はたっぷり含まれている。
記憶を失った女性の事件に立ち会った臨床心理士岬美由紀。隠された真実を解明し、姑息に職務を悪用しおのれの欲望を満たした防衛省職員を徹底して断罪する。その怒りのすさまじさに、周囲は困惑する。心優しい正義感を持つヒロインの姿をよく知っているからだ。舞台は団地に、花火大会の会場へ、榛名山へと舞台は目まぐるしく展開する。
行き過ぎた正義感を法に裁かれようとするヒロインの窮地に、理解しあった旧知の仲間たち―臨床心理士の嵯峨、自衛隊のパイロットで元同僚の伊吹、ヒロインの正義感を信じてやまないベテラン刑事蒲生らが応援に駆け付ける。もう目は離せない。悪と正義の凄まじい闘いである。一気に読み進む。
確かに絵空事だが、時代を読み取り、法と正義の有り方はどうあるべきかをはっきりと読者に問い掛けてくれる。そこには弱者に対する愛情が忘れられず常に存在している。
事件がヒロインの手によって終着した後、法廷で裁かれるヒロイン。「たとえ相手が同情の余地のない犯罪者でも問答無用の暴力での断罪は許されない」裁判官の指摘がすべてを言い尽くしている。[司法に携わる人間としてあなたと同じ能力が備わっていたらと思わない日はありません」としめくくる裁判官。その人間味と仲間たちの喜びに胸が熱くなる。
この社会にまだまだ希望と夢は健在なり!生きる自信を与えてくれる秀作だった。

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