通園バスに乗り遅れた朝

通園バスに乗り遅れた朝

 その日はうっかりしていて保育園の通園バスに乗り遅れました。子どもたちがグズグズしていたせいもあるけれど、バスが定時よりも早く来たためですが、主人は冷たく宣言したのです。
「ちょっと早めに行っておくのがマナーだろ。遅れたからって来るまで送らないからな。歩いて行かせろ。甘やかせたらクセになるぞ」
「もう理屈ばかり言ってないで、車で送ったら簡単じゃないの。あなた父親でしょ!」
 文句をいくら言っても駄目。主人は頑として譲る気配を見せません。仕方なくわたしが付き添って保育園に向かいました。保育園まで子どもの足で45分近くかかります。
 田園に挟まれた通学路をテクテクと親子並んで歩いて行きました。ところが歩いて行くうちに思わぬ発見。子どもたちがイキイキと話しかけてくるのです。
「この道さ、お兄ちゃんらが小学校に行くとき使ってるんだぞ」「ほら、こんな草あるよ」「お空曇ってるから、雨が降ってくるよ」「お母さん、歩きっこしよう。競争だぞ」
 ……など、保育園に着くまで喋りっ放しの子どもたちに正直驚きました。
 それに買い物ではすぐに「疲れた、帰ろうよ」を連発する長男なのに、どうしたのか最後まで元気いっぱい!
「昔はみんな歩いて通ったんだぞ。あの道には、オレの思い出が詰まってるんだ……!」
 それ見ろと言わんばかりに得意気な主人の言葉は聞き流して、やっぱり子どもと歩いたのは正解だったなあと、ひとり嬉しくなったわたしです。
(神戸・1989・12・7掲載)

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