墓参にて

戦争の悲惨さ墓参で新たに

 お盆の墓参りに出かけた時、何気なく入り口に立てられた立派な墓碑銘に目をやり、新しい発見に驚く。
「恒雄、26歳、ビルマ戦線にて戦死」との記載。
 母方で唯一の伯父だが、昔伯父の戦死した話は折にふれ聞いたし、仏壇の上に飾られた兵隊服姿の写真が、それを如実に語っており、戦士の文字におどきはない。
 ただショックを受けたのは26歳と言う年齢。戦後生まれのわたしがすでに40に手が届きかけている今、20代での若い死がどれだけ惜しまれるべきかは、即座に理解できる。親にとっては悲嘆極まりなかったに違いない。
「お前は恒雄にうりふたつや」
 と、成長期のわたしを特別にかわいがってくれた祖父も、もういない。
 いつも口癖に「あれはよう出来た子やった」と、目を潤ませる祖父だった。どれほどの期待をかけた跡取り息子だったか。だからこそ、戦死の知らせを受けた祖父の悲しみは容易に想像できる。
 伯父の戦死で、養子を取って家を継いだ母。それを考えると、戦争がなければ今の私の生活はないはず。祖父と家族の悲しみを礎石になりたった現在の姿なのだ。
 戦争を知る世代が消えつつある昨今。再びあの暗黒の時代の襲来をくい止めねばならないのは、肉親を奪われた悲しみを背負って生きた祖父母の姿を知るわたしたちなのかも知れない。
(朝日・1987・8・24掲載)

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