親孝行はまだ遅くない

「親孝行は……」まだ遅くない

「これ見てんかいな」と母が不自由な足を引きずるようにして、やって来た。検診結果の通知を受け取ったのを手にしている。
「血糖値に異常があるから、精密検査を受けなさいって書いてあるわ」母に読んでやりながら、ふと母の年齢に目が止まった。70歳!思わず母の顔を見直した。信じられなかった。そういえば私はもう40になる……?
「もう70か。お母ちゃん、年取ったなあ」
「当たり前じゃ。お前も40じゃろうが」
「そりゃあそうだなあ」
 顔を見合わせて笑う。しかし、こんなかたちでしか母の年齢を想い出せない自分がちょっぴり悲しい。親不孝者だと思い、反省しきり。「親孝行したいときに親は無し」ということわざが急に浮かぶ。(まだ遅くないよなあ、お母ちゃん……)と、老いた母の顔をマジマジと見つめ、思わず照れ笑いした私だった。
(讀賣・1989年7月31日掲載)

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