記憶に刻まれた味噌汁

記憶に刻まれた味噌汁 

子どもの頃の食事に味噌汁は欠かせないものだった。一汁一菜ともいうべき貧しい食卓を補う重要な役割を担っていた。時には、ご飯に味噌汁がオカズというのもしょっちゅうだった。味噌汁をぶっかけたご飯を何杯も平らげた記憶が残っている。他に何もないのだから、腹が膨れるまで食べた。
 味噌は自家製。蔵の前にデーンと置かれた、味噌が仕込まれた樽が白くかびていたのを思い出す。仕込まれた野菜を溶いた味噌汁の具は、やはり家で収穫した野菜が中心。大根の葉もよく具にされた。
 時々、村の溜め池の雑魚(じゃこ)獲りで救ったフナを焼いて干した保存食が、よく入った。あまり好きではなかったが、貴重なタンパク源だった。
 正月は雑煮として味噌汁に餅が入った。白い餅にダシジャコや味噌の大豆カスがこびりついているのがイヤだった。それにしても、栄養タップリの自然食である。
 最近はなかなか食卓に味噌汁が上がらない。スープやコンソメの方が簡単だから、面倒な味噌汁は敬遠されるのだろう。とはいえ味噌汁で育ったせいで、無性に味噌汁が飲みたくなったりする。
 仕方なく一人分の味噌汁を作る。揚げ、豆腐、練り物、大根、ニンジン、サトイモ…具だくさんの味噌汁である。ミソは原料のかすなど混じらないなめらかなものだ。
 いい匂いが食欲をそそる。ご飯を食べる前に、まず味噌汁に手を伸ばす。ひとすすり、ふたすすり…旨い!でも、少し物足りない。あの頃の濃厚な味噌汁とは雲泥の差だ。
 味噌汁をすすりながら、昔への思いを巡らせてしまった。
(2012年11月7日)

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