ミニコラム

みずみずしい野菜は誰のおかげ?
 わが家の家庭菜園は、この春、妻が、
「自家製野菜で家計を補うのよ!」
 とえらく張り切って始めた。が、いつの間にやら、妻はその務めを放棄し、畑を耕し野菜を育てるのは、私の役目になってしまったのだ。
 そんな時に限って、酷暑渇水という大変な夏が来るから、オレはついてない。畑の土はカラカラで、野菜を枯らさないためには、川から水を汲んで来なければならないときた。それも、ひと往復では焼け石に水という厳しい状況である。某テレビ局の『大草原の小さな家』を思い出して、
「オイ、異常事態なんだから、手を貸してくれ。家族みんなで協力したら、水運びだってラクに終わるんだからよう」
 と私がいうと、
「そうね、子どもたちにも手伝わせましょう。私も家事を済ませたらいくわね」
 と女房。とりあえずその言葉を信じた私と子どもたちは、炎天下の中、汗ダクダクで水運びをした。が、女房がやってきたのは、狙いすましたように、水汲みがちょうど終わったタイミング。で、いかにも残念そうに、
「あら、もう済んでるじゃないの。私の出番あらへんね。みんな、偉い偉い!」
 といいやがった!もう、口あんぐり。開いた口がふさがらないとはこのことだ!本当にエラかったよ、オレたちは!
 以来、夏の間中、「家事が…」「せんたくが…」だのいって水汲みを逃れた女房。さらに憎たらしいことに、残暑厳しい8月の終わりに、こういったのだ。
「今年は、夏野菜に不自由しなかったわね。家庭菜園を始めた私のおかげだと思って、みんな感謝しなさいよ!」
 この女房のひと言を聞いて、ブッ倒れてしまったのは、私と子どもたち。ホント、いい根性してるよ!

ワシの名前じゃ不幸だって!?
 最初の子どもが生まれたとき、主人は、自分の名前を一一字入れるんだって大張り切り。それも、男の子だったら下に「太郎」を、女の子だったら下に「子」をつけるつもりでいた。
 主人の思い通りだと、「ツネ太郎」「ツネ子」になる。まさかそんな野暮ったい名前を愛するわが子につける気はあるまい、と思っていたが、出産した翌日、駆け付けて来た夫。真面目くさった顔で、
「ツネ子の誕生やァ!」
 それを聞いた私は大ショック。思わず、
「止めて、赤ちゃんを不幸にしないで!」
 と口走ると、
「なに?ワシの名前を一字やったら不幸になるんか?」
 と夫。私ははっきりと、正直に、
「うん!」
 と答えてしまった。
 それで今度は主人の方がショックをもろに受けたらしく、ヨロヨロと病室を出ていって、それっきり。
 結局、赤ちゃんは、漢字で「ナ・ツ・ミ」と、私の思い通りの命名となった。
 それからかなり長い間、主人は私に気づかれないないように、「ツネ子」「ツネ子」と小声で未練たらしく呼び続けていたが、その姿は実に憐みを催すぐらい可哀想だった。
 でも、いくら愛する主人の希望でも、子どもの将来がかかっている命名、そう簡単に妥協はできないんだから!

禁テレビのあとはテレビ中毒です!
 結婚した時、どちらともなくいい出した「テレビ無用論」。テレビに左右される新婚生活など真っ平ごめん!ってのが頭にあったのだ。少しはミエもあったかも?
 以来7年間にわたってノーテレビ生活で、普通ならテレビを見て過ごす余暇時間は、充実しっぱなしだった。おかげで子供も3人と順調に恵まれたのだが、今度は、この子供が、学校でテレビアニメの話題に入れないと仲間外れにされたので、思案もそこそこにテレビを導入した。
 子どものためだったテレビ。それが、これまでノーテレビで禁断症状にあった我が夫婦を襲ったのだ。それも、夫婦の好みが全く違うのだから、毎日醜いチャンネル争いとなった。小生は、ニュースとドキュメントにプロレスの深夜放送は欠かせないし、妻と言えば、不倫ドラマやセックスオンパレードドラマに目を点にしている。そこへアニメの子どもが加わって三つ巴の争いとなった。
 妻はドラマに触発され、
「ねえ、今夜久しぶりだから、いいでしょう」
 と身体をくねらせて誘って来るが、小生、妻の身体よりもみたいテレビ番組の魅力に負けてしまう。妻は怒り、とどのつまりは大ゲンカ!となる。
 考えてみれば、テレビが我が家に侵入してからというもの、夜の生活はお預けになってしまっている。女盛りの妻がイライラケンケンするのも当然かも。やはりテレビは魔物だと思っても、もはや手遅れかも知れない。

「やり直せたら」は式場?それとも僕?
「あんなバタバタした結婚式をするなんて!」
 結婚十一年目になるというのに、何かにつけてこう口にする妻。
 あれは、そう……妻が、私と交際を始めて3ヶ月もたたずに妊娠。あわてて妻の両親のもとへ足を運んだ。けれど、ひと回り以上の歳の差と当時の私の不安定な仕事などを理由に、両親は猛反対!そこで作戦を変え、正式に仲人さんを頼んで再訪問。妊娠の事実も幸いして、何とか両親の賛同を得られた。
 ところがここからが、バタバタ結婚式の幕開きだったのだ!できるだけおなかが目立たないうちに結婚式を済ませなくてはならぬと、大あわての式場探しを課せられた俺。仕事そっちのけで走り回った甲斐あって、見つけることは見付けたけれど、そこは時代に取り残された風情を見せるボロボロ神社。名前だけは、イズm大社北条分院とご立派だったが……?
 しかし、5か月のおなかを抱えた妻との結婚式は案に相違してつつがなく終わった。懸念していた式場のお粗末さも、妻の短大時代の恩師先生の祝辞に掬われた。
「時代に流された底の浅い結婚式と違い、心温まる最高のお式に立ち会えて、本当に幸せですよ。和子さん、いいお婿さんに抱得合いましたね。おめでとう」
 私の隣で妻は嗚咽し、幸福な涙を流していた……。
 にもかかわらずだ1妻の本心は、いまだに「やり直せたら……!」なのである!俺だって背一杯やったじゃないか。頼むから、もういい加減に愚痴りを止めてくれないかなあ。
(1995年7月20日発行・小学館『当世夫婦口論』収録掲載文より)



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